なれあい型

中学二年生の時になれ合い型になってしまった教師がいた。私はその先生が好きだったし、多くの男子生徒からも人気があった。大学を出たばかりで、兄貴分のような感じが原因だったと思う。しかし女子生徒の一部に反発を買った。何が原因か私にはわからない。しかしその数人の女子生徒の反発でクラスは崩壊した。その女子グループは勉強の出来るグループだった。クラスでリーダー的存在だったので、クラス全体が教師糾弾大会と化してしまったのだ。学級崩壊は数人の生徒が動くだけで起こる。数人の生徒が教師の権威を侵食する。大多数の生徒がよるべき規範を失う。
学級崩壊に直面した先生の対応がまずかった。温厚な先生だったがいきなりその生徒を怒鳴りつけたのである。それも意識的にではなく、思わず、という風情だった。ただ救いは女子の中でも主動的ではなかったグループが「先生も少しかわいそう」と言い出し、何となく収まったことだ。
塾での経験は、最初にバイトを始めた塾での出来事だ。そもそもその塾は室長が「親しみやすい塾」を打ち出そうとしていた。しかしそれは単にけじめがないだけだった。「マニュアルは嫌い」というのが口癖だったが、磊落な人柄を演出しようとしたのだろう。ただただ仕事がなし崩し的に講師に押し付けられる口実となっただけだった。
けじめの無さは生徒を事務スペースにいれたことに現れている。当時社会を教えていた私は中3の女子の質問に答えていた。テスト前でいろいろ聞きたいことがあったのだろう。室長の指示で事務机に生徒を座らせて指導していた。しかしその日は夕方には教室会議があり、生徒がいては困る、という日だったのだ。当然「帰ってくれ」ということになる。しかしその時に不思議なことに室長は塾の都合を言わずに一方的に「長すぎる」といって帰らせようとしたのだ。当然せっぱ詰まっている生徒は抵抗する。抵抗する背景には生徒がつけ上がっていることもあったろう。また格好をつけて塾の事情を正直に言わないカッコ付けの側面もあったろう。塾崩壊には至らなかったものの、その生徒及び保護者と室長との関係は修復しなかった。ちなみに根に持っていたのは室長の方だった。大人げない。
なれ合い型を標榜する上司は信頼してはいけない、というのは人生のいい教訓だった。