夫婦げんか

私の塾の同僚の講師が夫婦げんかをしたらしい。論題は「ニューオーリンズ水害」。妻君はいう。「被害の拡大はブッシュ政権セーフティネットの貧弱さが原因だ」と。夫君はいう。「セーフティネットの貧弱さだけでは説明できない」と。そして今回の問題について考察すべき論点として、「ブッシュ政権の問題点−州兵が多数イラク戦争に駆り出されていて治安維持がおろそかになった点と予算がないということでなおざりにされた堤防の修理」の他に「アメリカの歴史的経緯としての銃社会」と「都市問題に通有の暴動」などの論点を上げると、「ブッシュを免罪するのか」と責められたそうだ。断っておくがこの夫婦はそろって「左翼」である。なぜ「左翼」同士がこのような対立をしているのか。
その原因は多分に二人の立場の違いによるのだ。この夫婦は妻君は某市の公務員で組合員。夫君は塾講師で歴史学の研究者*1だ。組合員はある種末端の政治家だ。政治的スローガンとしては「ブッシュの無能失政」を主張することは分かりやすくなる。一方研究者としては問題を単純化することは思考停止につながる。単純に結論が出る問題ではないのだ。これはどちらが正しいか、という問題ではない。とぐにゃぐにゃした、よくわからん結論になってしまったのは、私が研究者だからだ、といいたいが、多分私の場合は「へたれ」の上に自分でもわかっていないからだ。

*1:ここで研究者というのはアカデミックの研究者を指し、少なくとも学会に属して研究活動を継続している人を指す