カトリーナ外伝

カトリーナ問題でブッシュ政権が少しだけ窮地に立たされているらしい。ニューオーリンズで犠牲者が多かったのが黒人だったからだ。白人の富裕層は助かったが、逃げるための情報も手段も知識もなかった人たちは取り残された。自己責任の社会とはそういうものだ。これはアメリカの共和党が伝統的に採ってきた小さな政府政策に起因する。小さな政府では自己責任が基本だ。更に言えば平等ではなく「公平」だ。努力したものが報われる社会、というが、努力する条件があり、その上で努力したものが報われる社会だ。
日本でも阪神大震災の時に主として犠牲になったのがボロいアパートに住んで居た所得の低い層だということは周辺では知られた話だ。貧困率が上昇している日本では、金次第で助かったり助からなかったり、ということが増えていくのだろうな、と思うわけだ。貧困問題の解消法としては所得の再分配というのが挙げられるわけだが、この数年の動向は逆に働いているからな。負担は薄く広く、というのでは金持ちはますます金持ちに、貧困層はますます貧困になっていくばかりだ。
2003年、贈与税が軽減された。正確に言うと住宅取得資金を親から援助を受ける場合、資金援助を相続対象として先送りすることができるのだ。で、相続税は法定相続人一人当たり二千万までは控除されるので、普通は払わなくてもいいだろう。これで自宅を買ってもらった人は、家賃を払わなくてもいいのだ。家を買えない人は家賃を搾取され、家を買ってもらった人は家賃よりは安い維持費で家を維持できる。そこに持ってきて負担を薄く広くだからな。そら貧富の差は大きくなる。ちなみに私はほぼ中間値だ。平均値ほどではない。しかし不安定なので子供は作れない。塾生が減少した時にはめっちゃ弱った。月の給料が十万円。生活できるか。しかもその頃は家賃を払っていた。月八万円。それまで月30万程度あったから家賃八万円は払えたのだが、月十万では払えない。親に援助してもらうという情けない仕儀となった。やがて月二十万強となり、助かったのだが。今は月二十万から六十万を変動。時間数に応じて給料も変わるので、不安定なのだ。一応家買ってもらったので小泉さんありがとう、だ。家賃の代わりに管理費と修繕積立金だが、月七万違えば大きい。
事情は大学の教師も変わらない。今や専任と言っても多くは任期制。実力主義の名のもと、基礎研究は打ち切られるし、まして歴史学という学問はまじめにやれば政府の役には立たないから、立場は厳しい。将来が不透明な中で子供など作れない。
親は勝ち組だが私は負け組候補なんで、将来は真っ暗だ。今回の選挙。自民党がどうのこうのではなく、自民党に投票した人の言い分を聞いていると、勝ち組と負け組の格差を広げたい、という情熱がひしひしと伝わってきて、暗澹たる気分になったのだ。いや、民主党だって十分その点ではヤバイのであって、例えばどう考えても岡田マニフェストの方が小泉マニフェストよりも新自由主義的傾向を強めている、と私には思えるのだが。だから十分民主党圧勝もやばいのだが。自民党にも大きな政府的傾向を持つ人もいて、しかし選挙民の声を聞いていると耳に付くのが、格差を広げようという情熱。広く薄く負担を求める、という声は明らかに格差社会を作り出そうとする情熱の産物である。