個性

今日は三年生。今年の三年生は何なんだ?漢字テスト。0点続出。私は0点を何回も取った武勇伝の持ち主だ。ちなみに私は中学受験とは全く無縁の、落ちこぼれ生徒だった。しかし私が今いる塾は中学受験専門塾だ。何で0点なのだ?
昨年まではみんなほぼ満点だった。私は「みんなすごいな」とほめておだてていればよかった。三年生相手にはスパルタはしたくない。「勉強ってこんなに楽しいんだ」ということがわかってくれればいい、と思っている。しかし0点はないだろう。
というのも、あらかじめ漢字練習帳の範囲を指定して、そこを勉強すれば満点が取れるようになっているのだ。だから0点をとる生徒は何もしていない、ということになる。先週もぼやいたが、外国に行っていたことを言い訳にしている生徒がいる。曰く「外国に言っていたから出来なかった」。アホなことを言うな、出来るか出来ないかではない、やるかやらないかの問題だ、外国に行ったことを言い訳にするな、と一喝してやった。
ちなみに私も二年生から四年生の三年間外国に行っていた。漢字は書けなかった。もちろん私は言い訳にして漢字に対する努力をしなかった。間違いなく落ちこぼれる。だからしっかりと矯正をしておく必要がある。小学生の成績を上げる秘訣は、私の小学生時代と反対のことをやらせればいいのだ。落ちこぼれ体験も結構貴重なものだ(笑)。
ただ今年は別に外国帰りでもないのに0点が結構いた。「やるべきところ、あらかじめ言われていたやろ?」と聞くと、みんなうなずく。しかしやっていない者がしっかり0点。なぜやらないのかな。
塾長に話をすると、いまはそういうのを「個性」として尊重するのだそうだ。いい時代だ。私が漢字を書けなかったのも、九九を覚えられないのも、協調性がないのも、整理整頓が出来ないのも、手先が不器用なのも、運動神経がないのも、全て個性だ。尊重するべきなのだ。
私は自身の体験から、そういう生徒がいてもいいと思う。そしてそういう生徒は、焦って小学時代から勉強しなくても、いつかは勉強する気になるかも知れない(私も浪人してからまじめに勉強をし始めた←遅いって)し、また勉強して高学歴を身に付けるだけがいい人生ではないことは、私や私の弟を見ればよくわかることだ。どちらもロクな人生送ってない。逆に学歴がなくても立派な人はいくらでもいる。勉強をする気が全くない子どもを無理に塾、それも中学受験専門塾に通わせる必然性は全くない。それこそ個性の圧殺だ。「個性、個性」というが、「個性」を発揮させる前にやるべきことはあるだろう。努力なくして「個性」はない。私だってヘビに関する勉強は必死でした。ヘビの掴まえ方、ヘビの種類の研究、ヘビの飼い方など。そして私はヘビに関する個性を認められた。個性を発揮するには努力が必要なのだ。もちろんヘビでは未来につながらない。ヘビを専門的に研究するためには数学の勉強も必要だ。鉄道でも私はエキスパートになった、つもりだった。しかし本当のエキスパートになるには数学が必要だ。私にはその努力が足りなかったため、ヘビや鉄道で個性を発揮するには到らなかったのだ。
受験をさせようとすれば、それに向かう努力はしてもらわないと困る。しかも三年生では自分の意志で勉強をすることはほとんどない。親の意向が強いのだ。子どもを勉強好きにするための努力は惜しまない。しかし最低限、家庭でやってほしいことはやらせてもらわないと、成績は保証できないのだ。
ちなみに頭がいい親は子どもを放置する傾向がある。私の父親も「僕の息子だから頭がいいはずだ」と勘違いして、子どもが落ちこぼれていても気がつかなかった。あっけなく浪人してはじめて気がついたようだ(爆)。子どもを受験させたい人は気を付けましょう。
ちなみになぜ中学受験をするのか、について、石原千秋氏の場合は公立中学における内申書の存在を挙げていた。つまり内申書で全人格を評価されることにより、公立中学から進学しようとすれば、学校に生殺与奪の権を握られることになる。内申書に縛られたくなければ、中学受験、という理屈だった。娘さんを中学受験させた私の同僚*1の場合は、主夫だった。夫人はキャリア公務員なので、子育ては夫の仕事なのだ。しかも娘である。女の子が高校受験をする時には、父親との関係は微妙だろうと予測した。親の言うことを素直に聞く小学校の間に中高一貫教育の学校に入れた方がいいだろう、という読みだった。高校を出してやるのは親の努め、と言っていた。高校出たら、勝手にしろ、というスタンスだったようだ。もちろん本人が高校への進学をしたくなければ、どうでもいいのだが。私の知り合いにも中卒で立派な人はいくらでもいる。というよりもあまり知り合いはいないが、みなさん立派な人ばかりだ。
だから私は学歴を付けるべきだ、とは思わない。しかし、もし学歴を付けたいのであれば、それ相応の努力は親も子もしなければならないだろう。努力はしたくないが、学歴はほしい、というのは虫が良すぎる。世間がみんな中学受験、というので、自分も中学受験をしよう、とパニクって塾に我が子を入れるのは、私としては大変ありがたいのだが(笑)、子どもにとっては迷惑な話だ。親子で意思統一はしたほうがいいだろう。

*1:塾講師なので金はない。だから国立。塾にはいかずに自分で教えた。まあ、その人が中学受験専門塾の講師なのだ