就職状況

ある大学教授のブログを拝読していると、「宴の途中で先生と話し合ったが、わが大学の就職状況がよくなったことに景気の動向がよく現れているという。中小企業云々という意見があることは知っている。しかし人はおのれの見聞したことしかなかなか納得しないものである。そこで私はこう結論する。大学生の就職状況は景気回復を示している。」てなことをおっしゃていた。この人はデータ重視のタイプではなく、自分の素朴な感性を重視するタイプとお見受けした。エッセイストでもあるらしいので、それはある意味正しいのだろう。しかし日本の「随筆文」の貧困はこういう人が「随筆文」の大家であることに起因する。知里真志保の言葉「随筆とは筆にまかせてデタラメを書くことだとこの人たちは心得ているのだろうか」(『アイヌ語入門』あとがき)というのがまさに当てはまる。
大学生の就職状況は数字上は好転しているだろう。しかし問題は中身ではないのか。非正規雇用が増加している現状を見て「就職状況」がよくなっている、というのは違うだろう。景気回復と同じ「偽装」でしかない。景気も数字上は「上向き」らしい。しかしどれだけの人がその豊かさを実感しているのか、と思う。塾生が退塾する最大の理由が経済的理由になって久しい。景気は「好転」しているはずだが、苦しい人は苦しいのだ。「頑張った人が報われる社会」だそうだから、そういう人にとってはいい社会だろう。
実際一番得をするのは親が頑張った人だ。景気回復策の一つとして贈与税の軽減措置があった。不動産取得にかかわる贈与税を非課税にし、相続税に回せる、というものだ。しかし相続税がかかるのは相当大きな額でないと中々課税されない。結局一方的に税が免除されることになる。親からマンションでも買ってもらえれば、それで大分経済的負担が楽になる。月10万円の家賃を負担していたとしたら、年間120万円だ。毎年これだけの金の差が出る。格差社会で得をするのは「頑張った人」ではなく「親が頑張った人」なのだ。
あとこのブログを拝読していて、リンク先のブログも見ていて興味深かったのは、野口英昭氏「自殺」に関する姿勢と、政治的姿勢がなぜかシンクロしていること。あれは何でだろう?