李下に冠を正さず

タミフルと異常行動との関連を否定する研究内容をまとめた研究グループにタミフルの販売元から寄付金があったケース。いくつかのことを感じたので備忘録代わりに。
私が一応所属している学会で、かつて英文年報を出すとかでもめたことがあった。当時委員だった私はもめているところをずっと見ていたのであるが、結局600万円を捻出できない、ということでつぶれた。総会では企業からの寄付金を募ってはどうか、という意見は失笑とともに否定された。一応某左翼系の学会なので、企業からの寄付金は受けることは出来ない、というのが理由である。実際には英文年報を出したがっている大家と英文年報を出す時に実務をやらされる研究委員の間の軋轢が原因だったのだが、最終的に研究委員側が「金」で押し切ったことに、当時総務委員だった人がぼやいていあ。「誰か600万円くれへんかな」と。
私は父に聞いてみたことがある。「600万円の寄付は実際出来るのか」と。父いわく、今の社長は文化的活動に金を出すのが好きだから言えば喜んで出してくれるだろう、と。さらに「いくらいるんや」と。もうつぶれた話なので金はいらなかったのだが、つぶれた理由として「企業の縛りが出来る」という、当時総会で出た議論を言うと、父は爆笑していた。「600万ぽっちでそんなこと考えない。○○から寄付がありました、の一言で600万円の宣伝効果はある」と。中外製薬側の意識はそんなものだろう。1000万円ぽっちでタミフルの研究結果を捏造しようと言うけちな考えはなかっただろう。もし圧力をかけたいのであれば、それこそ何億という現金を菓子箱の裏にでも入れるはずだ。
研究者サイドの事情を言えば、例えば関大理事長の「大学の教育・研究の柱のうち、お金は主に教育に使います。研究費は教授らが自力で集めるようになってほしい。」という発言を鑑みるに、企業からの寄付金を募らなければ研究すらできなくなる、という時代が来ているのだろう。横浜市立大学がどういう研究費の体制だったのか、知る由もないが、企業からの寄付なしには研究もできない状況だったのだろうとは思う。
理系の研究者が言っていたことを思い出す。理系は金がかかるので企業からの寄付金が不可欠で、どうしても企業の顔色をうかがってしまう、と。企業側は「それぽっちの金」と思っていても、大学の研究者には大金なのだろう。企業と研究者の認識のズレが今回の問題の一つの問題点であると思われる。