西武球団の裏金問題

かつて小島弘務という投手がいた。社会人時代、西武ライオンズとの間に事前交渉の疑いをかけられ、ドラフトから外された選手だ。小島投手自身のインタビューでは西武側は一応コミッショナー事務局に確認した上でやっていたのを覆された、ということだったらしいが、一つ言えるのは、西武の対応で小島投手自身選手生命を絶たれかけた、ということだ。小島投手は翌年のドラフトで中日から一位指名を受け*1、少なくとも私はほっとしたことを覚えているのだが。
西武球団には自浄能力がないのは事実だろう。小島投手問題で懲りているはずであり、それを教訓にしなければならなかったはずだ。しかし私には西武だけの問題には思えない。
今手元に『プロ野球スカウティングレポート2007』(監修小関順二アスペクト刊)という本がある。そこの某選手のところには次のようにある。「入団時のゴタゴタで、プロ入りの時点から野球に打ち込める精神状態を保てなかったことが尾を引いているように感じる」。その結果「本当の実力を出し切れぬまま、年だけを重ねてしまい、いつの間にかベテランと呼ばれる年齢になってしまった」ということである。傾いていた実家の会社の借金を某球団に肩代わりしてもらう見返りに、本来希望していた球団ではない球団に逆指名して入ったこの選手は確かに「すっかり老け込んでしまったというイメージ」である。
逆指名、自由獲得枠、希望入団枠と少しずつ名前を変えても問題点は同じである。そして現在希望獲得枠撤廃に反対している3球団のうち、2球団は逆指名制度においてよくない噂がささやかれている球団である。球界に自浄能力がないのは誰の目にも明らかであろう。
小宮山悟投手のコメントは重い。「ファンが、何てことをしたんだと思ってくれればまだ救いがあるが、やっぱりなと思われると、回復するのにはとんでもないエネルギーがいる」。私は「やっぱりな」と思ってしまった。

*1:その年のドラゴンズの二位指名が矢野輝弘捕手。