希望枠撤廃

今回の問題で一番問題があるのは、根来泰周コミッショナー代行であることは間違いがないであろう。希望枠撤廃で一致していたのだが、巨人がおそらく自分が唾をつけた選手をとらないといかん、という問題でもあったのか、難題を持ち出して問題を紛糾させ、根来コミッショナー代行が「仲裁案」を出してごまかす、という典型的な出来ゲーム。茶番というのがふさわしい。
思えば根来コミッショナー代行はコミッショナー時代、球界再編でも巨人の意を呈して動き、事態を紛糾させた。「選手会は法的に労働組合ではないから、ストライキを起こしたら、球団は損害賠償を請求できる。交渉は強気にいって問題ない」という発言は、「すぽると!」内部で板井保之氏に暴露されたものであり、それを聞いた古田敦也選手会会長が生番組でぼろぼろ涙をこぼしていたのは記憶に新しいところである。
一部球団の意向に沿ってしか動けない体質を当時コミッショナー事務局は批判されたのではないのか。今回もその轍を踏むことになるのか。
当日のプロ野球代表者会議の様子を、一番詳しく報道しているスポニチにしたがって羅列すると次のようになる。

希望入団枠撤廃の条件で巨人がFA取得年限の大幅短縮(現行9年→5〜6年)で譲らず、「多数決を採ろう」との提案。
野球協約上、重要事項の決議には4分の3以上の賛成が必要。巨人と中間派のソフトバンクと広島を除く8球団が「即時枠撤廃」を主張。多数決ならば希望枠即時撤廃という決定が出るはずだった。
その時、根来コミッショナー代行の「意見」が記された紙2枚が配られた。1枚目に「希望枠撤廃はFA短縮が不可避」との理念、2枚目に「FA年数は7年。段階的に移行」との試案。巨人・清武代表が「コミッショナー裁定は重い」と7年で同調した。
ある首脳「あれで会議は紛糾した」「現行9年から1年短縮なら応じられるが2年だと反対が多い」。
根来氏「世間の風や勢いに流されて理屈を見失ってはいけない。来年3月まで審議を続け、今年は暫定的に従来方式でどうか」。

巨人が希望枠撤廃にこだわる理由としては、優秀な人材の海外流出の可能性がある。行きたい球団に行けないのであれば、メジャーへ行こうと言う選手が増え、海外流出につながる、という。そのため、希望枠撤廃ならば、FA期間の短縮は避けられない、というのだ。一方パリーグサイドとしてはたかだか5〜6年で出ていかれては困る、という事情がある。その点では巨人とコミッショナーを責めるのは酷であろう。言い分は一理ある。しかし現状一番問題となっている希望枠を今年残す必要はあるのか、という点だ。紛糾した後、「今年は暫定的に従来方式」というのであれば、最初からそこに着地点が存在し、そこに着地させるために紛糾させたのではないか、と思われて仕方がないのだ。もちろんその絵を描いたのは巨人とコミッショナー事務局以外にはありえない。一部パリーグ球団は希望枠を使わない、と表明した。セリーグ球団も追随すべきで、巨人とソフトバンク以外は希望枠を使わない、という選択をする以外、アマ野球側の不信感を取り除くことは出来ないだろう。
ちなみに今回抵抗している巨人とソフトバンクは過去に裏金で大量に選手を集めてきた球団である。
仄聞した例を挙げておくと、ヤクルト志望と言われていた某選手の実家の借金を肩代わりして逆指名させ、現在その選手は「老け込んだ」と言われている。その選手を見ると痛々しい。父親が口を滑らせた例もある。裏金を蹴って別の球団に来た選手もいた。そのチームのファンの間では昔は有名だったが、その後の不甲斐ない活躍ぶりで忘れ去られていた。この数年はいい活躍をしていたが、昔のこととてあまり話題にはなっていない。スカウトの自殺問題もあったな。今年もソフトバンク志望の選手で別球団から指名され、指導者が必死に抵抗していたケースもあった。結局本人はプロに進んだが。こういうのは本人ではなく、周囲に金が出回っているケースだろう。
二球団以外にもいろいろ話がある。失言で有名な某オーナーがある監督について語っていたのは「それって裏金やん」と思ったことがある。前の監督は「だれだれが欲しい」としか言わなかったが、次の監督は「だれだれをほしいが、そのために本人にかかる金はなんぼだが、関係者のだれにはなんぼ、だれにはなんぼ、合計なんぼかかるから金を出してくれ」と言ってくる、というのだ。そのオーナーも、大学生有力選手に対する裏金問題で辞任してしまったが。
そもそも希望枠は指揮能力に疑問の残る某監督のために某オーナーが用意したもので、今は裏金の温床となっているだけである。裏金といっても木村雄太選手や清水勝仁選手の金は微々たるもので、いざ指名ともなると、何億という金が本人のみならず、関係者にばらまかれるのだ*1。西武の「栄養費」は氷山の一角なのである。

*1:専大北上が除名処分すら検討されているのはそれが無関係ではないだろう。専大北上にも多額の西武マネーが流れ込んでいる、と高野連は見ているのだろう。