経済財政諮問会議

これも今回目を引いた記事(「ひこばえ通信」)。「共済だより」という項目のなかの「楽楽だより」。介護の最前線の体験談などもあるが、今回の記事は少し趣が違った。
記事は「コムスンから見えるもの」と「民間参入は『厚労省の政策ではない?』」の2節から成っている。
1節の「コムスンから見えるもの」で印象に残った文章は

人が人を援助してお金をもらうサービスは、コンビニのようにチェーン展開すれば、均質のサービスが保証されるわけでありません。また、利用者との信頼関係が基礎となりますのでいったん「出店」したら、なかなか撤退できません。

というところ。塾でも同じことが言えるのだが、実際にはあっさり撤退したりする。それと「均質のサービスが保証される」わけもないのだが、そこを謳う塾もある。私がかつてバイトしていた塾だ。両方とも。あそこも感心しない塾だったな、と思う。かなりネオリベ的な雰囲気のある塾だ。だからではないだろうが、転職者も多いように思う。室長(最近は校長と称している)はかなり激務で大変そう。社長はもと日共の市議会議員だったはずだが。
2節の「民間参入は『厚労省の政策ではない?』」ではかなり重要な指摘をしている。介護保険法や障害者自立支援法における「民間事業の参入」という方針について、その政策を打ち出しているのが内閣や経済産業省であり、経済財政諮問会議*1をはじめとした諮問機関からの圧力に厚生労働省がいいなりになっているとしか思えない、という。

経済財政諮問会議はその目的とメンバーからして、この国の社会保障のあり方や医療や福祉の課題を話し合うところではなく、経済と財政を話し合うところ

であり、それは

つまり、この国では国民の福祉よりも「経済・財政」が優先され、福祉や医療の制度変更は経済産業省財務省の意向が大きく反映して

いるところに問題がある、としている。そのような中で

厚生労働省介護保険改正で「高齢者の尊厳」を謳いながら介護報酬を引き下げたり、「障害者の自立」を掲げながら一割負担を導入したり、「良質な医療の提供」といいながら診療報酬を引き下げたり

というような、矛盾した政策しか打ち出せなくなっている、という。
経済財政諮問会議の問題点については森永卓郎氏が次のように指摘している。

経済財政諮問会議というのは言ってみれば安倍総理の分身だ。各省庁に対して官邸が強行突破を図るための武器であり、いまや省庁は政策をこの会議に持ち込んで、オーソライズしてもらっているほど力を持っている(「http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/85/04.html」)。

森永氏は経済財政諮問会議において二つの提言がなされている、と指摘する。

一つは「結婚、出産などの選択で税制がゆがみをもたないよう各種控除等を見直す」。もう一つは「安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わない」

言い換えれば

人的控除の圧縮あるいは廃止と消費税率の引き上げがテーマとなっている

という。経済財政諮問会議において

こうした提案がされているということは、上げ潮路線は既に捨て去られ、増税路線が既定事実になっているということだろう。参議院選挙が終われば、あと2年は国政レベルの選挙はない。与党が勝てば政府は2年間やりたい放題となる。必ず政府は人的控除の圧縮・廃止、消費税率引き上げを実行しようとするはずだ。

と締めくくる。ちなみに文中の上げ潮路線とは安倍政権がもともと目指していた路線で

高めの経済成長を続けていけば、自然増収によって、それほどの増税は必要なくなるという考え方だった。この路線を支えていたのが当時の中川秀直自民党政調会長(現・幹事長)と竹中平蔵大臣だ。

というものである。しかし政府税制調査会会長の香西泰氏は

成長だけでミラクルのようなことが起きるのは、確率ゼロではないが、政策としては中道を歩んでいくしかない

上げ潮路線を否定、前政府税調会長の石弘光氏の打ち出した「扶養控除・配偶者控除・給与所得控除など人的控除の圧縮と消費税率のアップというサラリーマン狙い撃ちの大増税」という中期答申を継承する方針を打ち出した。これが「上げ潮路線は既に捨て去られ」という記述の意味である。思えば安倍総理

「上げないなんて一言も言っていない。基礎年金は全部税と言っているのに、『1%も上げない』と言っている(民主党代表)小沢(一郎)氏とは明らかに一線を画している。」「決して消費税から逃げることはしない。税制の抜本改革は近いうちに信を問うことになっている」(「http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/61531」)

というのも、「上げ潮路線」を捨てることの表明だったのだろう。ただ

「引き上げとならないよう徹底的に歳出を削減する。経済成長を続けることで、税収を増やすことは可能だ。上げなくて済む可能性は十分にある」(「http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/62506/」)

と発言を「上げ潮路線」よりに修正してはいる。問題は、安倍氏が議長を務める経済財政諮問会議や政府税調・自民党税調との関係だろう。

*1:現在の経済財政諮問会議のメンバーは以下の通り。* 議長 安倍晋三内閣総理大臣)議員 塩崎恭久内閣官房長官大田弘子内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当))菅義偉総務大臣尾身幸次財務大臣甘利明経済産業大臣福井俊彦(非)(日本銀行総裁御手洗冨士夫(非−経団連会長、キヤノン会長)(民間)丹羽宇一郎(非−伊藤忠会長、日本郵政株式会社取締役)(民間)伊藤隆敏(非−経済学者)(民間)八代尚宏(非−経済学者・国際基督教大学教授)(民間)(非)は非常勤。