安倍総理続投について

参議院選挙は政権選択選挙ではない、という安心感からか、野党が勝利することはしばしばある。参議院で負けて退陣するのは党内向けの行動でしかない。自民党が退陣必要なし、と言えばそれまでである。安倍総理が退陣するのは衆議院選挙で負けた時か、自民党の総裁選で負けた時か、党内の突き上げに耐えられない、と判断した時か、自分で責任を痛感して退陣しかない、と自分で思った時だけである。
安倍総理が続投することで、何が起こるか、と言えば、今後最低三年間は参議院は野党が第一党であり続けるため、三年間は政治的に不安定な状況が続く、ということだ。参議院議席配分は現在定数242議席に対し、与党105議席・野党134議席・その他3議席となっている。「その他」が気になるところだが、今回改選された「その他」候補は川田龍平候補なので、与党にはならないだろう。是々非々ですらあるまい。次回の2010年に改選になるのは与党58議席、野党61議席。今回改選された議席数である与党47議席・野党73議席を考慮すると、次回の参議院選挙で与党が過半数を回復するには、58議席から74議席への大幅議席増が必要である。2001年に自民党は64議席公明党が12議席、合計76議席を獲得したことがあるので、2001年並のブームが起これば可能性はないではない。それで起こせなければ2013年までは与野党逆転状況は解消されない。
参議院における与野党逆転が何をもたらすのか。強行採決はできにくくなるだろう。衆議院で可決されても参議院で否決されれば、そこで立ち往生する。こういうことを書くと「憲法59条をお読みください」という人がいそうだが、衆議院の再可決はそうそう使う分けにも行かないし、法案のスケジュールを考えると再可決の連発はかなり厳しくなるだろう。少なくとも安倍総理が連発してきた「不正常採決」は通用しづらくなる。さらに参議院での問責決議案の可決、というカードもある。衆議院の不信任案の可決、あるいは信任案の否決ほどの威力はないが、問責決議案の採決で日程はさらに厳しくなる。政権の運営に大きな制約が課せられるのである。
この閉塞状況を打開しようとすれば、衆議院の解散・総選挙で民意を問う、という方法はある。ここで安倍政権が衆議院で圧勝すれば、民意は安倍政権にある、ということで続投は支持される。しかし現在小泉劇場の結果の大きな議席であることを考えると、今解散・総選挙では与党の議席数が三分の二を割り込み、衆議院における再可決すらできなくなるだろう。現時点ではまだ衆院の再可決というカードは切れるのだ。よくてカードを失う、下手をすれば衆院でも敗北して、安倍政権はさらに打撃を受ける可能性もある。総選挙ではおそらく与党の過半数割れはないだろうとは思うが、仮に過半数割れをすれば自民党の下野も考えれられるだけに、衆院解散・総選挙に打って出るというのは、安倍政権にとってはかなりのハイリスクの選択である。
衆院での解散をせずに参議院の制約を逃れる方法は、世論である。世論を味方につければ参議院での与党案の否決はネガティブなイメージを与えかねない。世論を味方につけるためには、実は安倍政権退陣がかなり効果的なカードである。国民的人気のありそうな人を後任の総理に据えることで、世論を味方につける。これは効果的だ。それをスピーディーに行うことで、安倍総理自身の傷も浅くて済み、安倍氏の再登板の可能性もあるかもしれない。しかしこれは既に機を逸しているかも知れない。その点はまだ何とも言えない。ポスト安倍としては麻生太郎外相か小泉純一郎前総理がこの条件に当てはまるだろう。小池百合子防衛相もその条件にはあてはまるかも知れない。ただ、今引き受けるのはいやだ、というのもあるかも知れないし、安倍総理が続投するのも、案外そういうところに原因があるのかも知れない。今引き受けても傷つくだけだろうし。
一方安倍総理が続投することで、自民党内部からの不満が噴き出す可能性はある。加藤紘一議員や谷垣禎一議員にはかなり不満が高まっているようで、その辺が自民党を割るかも知れない、と思ったり。今のまま自民党にいてもジリ貧なだけだろうし。
小沢一郎民主党代表は総理にしたい人のナンバー1になっているようだが、その目はないだろう。健康問題もあるし、そもそもその政治手法は総理向けではない。今回の参議院選圧勝を花道に引退もあるかもしれない、とすら思う。あとは菅直人代表代行か鳩山由紀夫幹事長に表舞台を任せ、自分は院政を敷く、ということを考えているのではないか、なんてことも思ったりもする。
で本来のテーマにもどると、今は安倍総理退陣すべきだ、という意見が多いが、私自身はそうは思っていない。退陣した方が自民党安倍総理本人の為だろうとは思うが、自民党及び安倍氏本人がそう思わない以上、続投もありなのだろう。
ちなみに反安倍再度にとっての最高のシナリオは、安倍政権がしばらく続いて、政権運営が行き詰まって解散・総選挙の結果の下野、ということになるのだろう。民主党の正念場はそこから始まるのだろう。
私個人について言えば、今回の選挙は、まあそんなもんだろう、という感じ。天木直人氏の次の総括につきる(「amakiblog.com - このウェブサイトは販売用です! - 政治活動 リソースおよび情報」)。

憲政党が消えかかっている。護憲を叫ぶだけでは日本を米国の戦争から引き戻すことは出来ない。そうなのだ。より深刻な事は無力な護憲政党の前に、日米軍事同盟がどんどん強化されて行き、在日米軍基地が固定化、永久化されていく事である。日本は再び元の平和な日本に戻る事はできない。この日米軍事協力の方向を変えない限り護憲をいくら叫んでも虚しい。
そのような深刻な状況にありながら、共産党社民党も一つにまとまることはない。自らこそが護憲政党であると主張する。ここに大きな勘違いがある。憲法9条を守る政党が偉いのではない。偉いのは憲法9条なのだ。その憲法9条が危機に瀕しているというのに、この期に及んでもまとまることが出来ない。9条改憲が行なわれればもはや護憲政党の存在意義はなくなるというのに、それを忘れて組織の存続を最優先している。。