原油高をめぐるエコノミストの議論

『ダイヤモンド・マネー』誌の記事から。
エコノミストのピーター・カルディロ氏は次のように言う。

今の原油価格は中国・インドの新興国の需要が高いことに加えて、地政学的な要因もあってプレミアムがついている状態だと思います。どうしても今は投機的な側面を持っていて、5月のナイジェリアの石油施設の爆破のような有事がまた起きたら1バレル=150ドルの水準も現実離れした数字ではないのかもしれません。ただし、こうして5月に突発的に上がったものの、基本的には今の1バレル=125ドルの水準が高値だろうと考えています。そしてこれから1バレル=90ドルくらいの水準まで下落するのではないかと予想しています。

逆にエコノミストのリチャード・ホイ氏は原油価格はどこまで上がるかわからない、という。

過去の原油高はOPECが供給を調整して上がっていた。基本的に景気が悪いと需要が減り価格は下がります。景気循環から言えば、価格は下がるはずですが、こうなるとどこまで上がるかわかりません。

現に1バレル140円まで上がっていることをみれば、ホイ氏の見方に軍配が上がった、ということになろうか。
さらにエコノミストのマイケル・フェローリ氏の見方を最後に紹介してこの記事を締めている。

資源価格の高騰がこれだけ長続きすることには驚いていますが、投機によって商品価格が上がっているという意見には懐疑的です。投機によって消耗品の値段が上がると言うのは考えられないシナリオです。やはり、実需に見合った値段なのだと思います。

この記事を最後に持ってきて、さらにこの記事全体の見出しが「商品価格の上昇要因は投機ではなく実需!?」であることを考えると、「実需」であることにしたい、という思惑が透けて見えるのは私だけか。
論調は実際には「新興国の成長による需要の高さから商品市況は今後も高止まりが続く」という見通しと関連しているので、思惑よりは分析の結果をストレートに出しただけなのだろうが。しかし「新興国の成長による需要の高さ」だけではないところに問題があるのではないだろうか。実需に加えてサブプライム危機で行き所を失った投機マネーが流れ込んで原油価格を押し上げている、という、そここそが問題であって、あたかも新興国の成長に原因があるかの論調は責任転嫁のように思えて仕方がない。投機に原因を求めると投資熱が冷める、あるいは投資環境が悪化することを懸念しているのだろうか。しかし投資熱の原則よりも世界経済の成長減速の方がより大きな問題であるだろう。記事の排列や見出しにいささか疑問を感じざるを得ない。