陰謀脳になった先輩と後輩

事例1 後輩の場合
私たちは合宿でぐだぐだ酒を飲みながらいろいろしゃべっていたわけだ。お題は「なぜ歴史学を志したのか」
ある後輩のA君が叫び出した。
A「我々には時間がないんだ!」
「はぁ?」と思うし、そもそも「我々」って、ちょっと何言ってるんだか分からないですね、という感じ。
A「フリーメーソンが世界を支配しようとしている。我々はそれと戦わなければならない!」
「へ?」いや、だからお題は「なぜ歴史学を志したのか」だぞ。脳内で戦うのは自由だが。
B(他の人)「いや、それならこんな所でくだ巻いてないで早く戦わなければだめなんとちゃうの」
きつ過ぎwww。
結局そいつは悪酔いすると「フリーメーソンが世界支配を企んでいて、日本人を洗脳している、戦わなければならない」と叫ぶことが多かったようだ。酔いが醒めると普通になるし。まあ変な本を読みすぎて、普段はそれがおかしいと自分でも分かっていても、悪酔いしてしまうと、その理性が失われ、陰謀論全開になってしまうようだ。そいつと酒を飲むのはできたら避けた方がいい、という話になっていた。酔わなければ至極気のいい男なのだが。
事例2 先輩の場合
C「明日オレの批判記事が赤旗一面に出る。Dさんにも迷惑がかかる」
いや、あまりにも意味不明。かなりの注釈が必要。
CさんもDさんも一応左翼の歴史学研究者。ただし共産党とは距離を置くノンセクト無党派)の左翼である。左翼は党派が違うともう敵みたいなもので、お互いに過去の差別発言や悪行を暴きあう関係。特に日本共産党はかなり党派性が強いことで知られている。ただ個人を赤旗の一面で批判するということはない。あくまでもCさんの妄想である。
家族の方はどうしていいか、おろおろ。そらそうだ。いきなり自分を聖戦士と思い込む被害妄想を家族の一員が叫び出したら、他の家族の心境は察するにあまりある。しかも何を言っているのか、わからない。そこで家族の方はCさんが一番信頼していた先輩に当たるDさんを呼んだわけだ。
Dさん登場。
D「C、分かるぞ、オレは大丈夫だ。オレのことは心配するな、オレがお前を守ってやる」
Dさんの解説によると、被害妄想に捕らわれている人間に「それはお前の妄想だ」と決めつけると、余計に陰謀論に閉じこもって、意思の疎通ができなくなるのだそうだ。だから相手がどんな変なことを言っていても、相手の世界観をとりあえず受け入れてやる。相手を落ち着かせてから、病院に行かせるのが正しい、ということらしい。結局Cさんはアルコール中毒の治療のために入院、下宿も引き払って実家で療養することとなった。半年後、Cさんは復活し、事無きを得た。