チェイニー前副大統領と拷問

いや、これはすごいな、と。『NewsWeekJapan』の記事(「「拷問の番人」チェイニーの暴走 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト」)(「「拷問の番人」チェイニーの暴走 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト」)。
コラムニストのジョナサン・オルター氏の記事。ディック・チェイニー前副大統領が拷問を正当化したことへの記事。

先週、米テレビ番組FOXニュースがチェイニーのインタビューを放映したが、2つの単語が耳に飛び込んできた。クリス・ウォレス記者が「CIA(米中央情報局)の取調官が一定の法律に違反した尋問を行ったケースもあなたは承認するのか」と質問した時に、チェイニーは「I am(承認する)」と応えた。

というニュースについて。
オルター氏はチェイニー氏の発言について「簡単だが、実に恐ろしい」「非常に反民主主義的で独裁主義的な考え方だ」と批判し、拷問の有効性についても疑問を呈する。

9・11テロの首謀者ハリド・シェイク・モハメドは、水責めによる拷問の後に事件に関する有益な情報をもたらしたとされた。ワシントン・ポスト紙によれば、彼は70人ものテロリストの名前を明かしたが、ほかの拷問された人たち同様、モハメドは痛みから逃れるために嘘をついていた

多くの取調官が拷問によってもたらされた偽情報で時間を無駄にしたと証言している。最近機密解除された国務省の文書には、04年のCIA監察官の報告書が含まれている。そこで監察官は水責めや他の拷問によって集められた情報によって、特定の「切迫した」脅威を阻止できたという確証は得られなかったと認めている。

日本でも苦痛から逃れるための「嘘」によって冤罪事件が起こっている。冤罪事件は冤罪によって犯人とされた人の人生を狂わせるだけではない。冤罪の裏には逃げおおせた犯人がいる。足利事件ではまさに逃げおおせた犯人がどこかで笑っている。これは犯罪抑止の観点から言っても不都合であろう。
オルター氏は次のようにまとめる。

歴史的な議論に勝利する以上のことを目論み、陪審員予備軍に「毒」を盛ろうとしている男は、憲法や法の支配の再定義をもくろんでいる。もしチェイニーが勝利すれば――世界中の人権侵害者が喜び、テロリストの勧誘活動が容易になり、アメリカ外交が悪影響を受ける。無罪の根拠が増えるので、テロリストの起訴も難しくなる。

しかし氏は「文明を後退させる存在」とまで批判するチェイニー氏の訴追には反対する。

必要なのは、拷問についての情報の完全な公表と、嘆かわしい失敗を公式に認めることだ。政治的な思惑に基づく訴追だと簡単に疑念をもたれてはならない。