大河ドラマ『平清盛』のツッコミ所

「王家がどう」とか「色彩がどう」とかツッコミがあるが、一番のツッコミ所はやはり吹石一恵演じる舞子が院御所で殺されたところだろう。ケガレを極度に忌む彼等が御所内で血を流させるわけはない。吹石一恵が忙しくて初回しか出演できないのであれば、御所の外で殺される、とかやりようはあったはずだ。
かつて『北条時宗』で近衛基平が御所内で自害するシーンがあり、それについて本郷和人氏は次のように述べている。

 平安末にラーメンが存在したか否か。これは知っている・知らないの問題にすぎない。清盛が白河上皇落胤か否か。これは学説の分かれるところですので、どちらを採ることも可能です。でも何十年も研鑽を積んでいるはずなのに、天皇や朝廷の本質を理解していないとなれば、これは中世史研究者としてのこの上ない恥辱です。関白に御所で切腹させるとは、考証役の私はダメな研究者だと、満天下に広言しているのに等しい。ですから、こうした根本的な誤りには、職を賭して異議を唱えなければなりません。もちろん、私もそうするつもりでいます。日ごろの信頼関係がきちんと築けていれば、制作のみなさんも、快く受け入れてくれるにちがいありません。
 このように考えて、私は時代考証に従事しています。(本郷和人『謎とき平清盛』70頁)

北条時宗』の考証は奥富敬之氏と杉山正明氏。「制作のみなさん」はあまり快く受け入れてくれなかったようだ。かつて『炎立つ』では原作が義経を大陸に逃していたのだが、それに考証の入間田宣夫氏が猛反発して行方不明としたようだ。なかなかスムーズにはいかない。
ちなみにもう一人の考証の高橋昌明氏は次のように発言しているらしい。

「清盛殿」とか「頼朝殿」と相手の実名を呼ぶ場面がある。実名で呼ぶのは大変嫌われる行為で、名前をよばれるということは、相手に支配されるとか、自分の大事なモノを持って持っていかれると思われていた。だから官職名で呼んだりした。だが、これでは見ている方が誰が誰だか判らないから、仕方ないのかもしれない。
もしそういったありえないことが出てきたら、私は懸命に止めたのだが振り切られたと思ってください。
脚本家は、朝ドラ「ちりとてちん」の脚本を書いた藤本 有紀さんです。起用された理由が群像を描くのに優れているからだそうです。実際に会ってみると、「アァァ・・・これは大変だ」と思いました。才能豊かな方だとは思いますが、歴史のことに必ずしも詳しくない。
ということで、果たしてどういう事になりますか?
ドラマ製作者の名前が出てきますが、そのなかに私の名がなかったら、喧嘩別れして辞めてしまったとお考えください。(大河ドラマ平清盛」放送決定記念講演会
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舞子の殺害シーンは振り切られたのかな?
そういえば『花の乱』では官職名で呼ぶようにしていたようだが、分かりにくかったようだ。