我が九条(その4)九条教実

九条道家の子の中でも一番地味。というか二条良実一条実経藤原頼経大河ドラマ北条時宗」で一条実経(井上順)、二条良実(谷本一)、藤原頼経宇梶剛士)が出ているのに対して九条教実は早世したせいで出てこない。まあ父の道家が出家して裏から政治を動かすようになる前に死んでいるので、影が薄いのも止むを得ない。彼が早世し、道家が失脚したせいで教実の子の忠家は非常に苦労したようだ。おかげで忠家以降はウィキペディアを参考にすることができない(笑)。大学の図書館も開いていないから『尊卑分脈』や『公卿補任』を使えないので、ウィキに頼っていたが、とりあえず教実で一段落、『尊卑分脈』『公卿補任』をみながらの作業となる。
No.4 九条教実(父:九条道家、母:西園寺公経女倫子)
01:建暦1(1211). 生(1)
02:建保5(1217).04.28.元服正五位下、任侍従、禁色を許される
03:建保5(1217).06.29.転右近衛少将
04:建保6(1218).01.05.従四位下
05:建保6(1218).01.13.近江介
06:建保6(1218).04.09.従四位上
07:建保7(1219).01.05正四位下
08:建保7(1219).04.08.従三位
09:承久2(1220).04.06.正三位
10:承久3(1221).01.05.従二位
11:承久4(1222).01.24.転権中納言、兼右近衛中将
12:貞応1(1222).12.22.正二位
13:元仁1(1224).12.17.兼左近衛大将
14元仁2(1225).01.05.兼左馬寮御監
15:元仁2(1225).07.06.転権大納言
16:元仁2(1225).09.10.橘氏長者宣下
17:嘉禄3(1227).04.09.転右大臣
18:寛喜2(1230).10.24.辞左近衛大将・左馬寮御監
19:寛喜3(1231).04.26.転左大臣
20:寛喜3(1231).07.05.関白宣下、藤原氏長者宣下
21:寛喜4(1232).10.04.摂政宣下
22:寛喜4(1232).12.12.従一位
23:文暦2(1235).04.28.辞摂政
24:文暦2(1235).03.04.辞左大臣
25:文暦2(1235).03.28. 没(25)

「選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消」(最高裁判例平7・2・28)

九条忠家に関する史料は今のところ手元にない。暇つぶしに最高裁判例をみていく。結構有名な判例で、地方参政権をめぐる議論の前提となる判例である。外国人に参政権を付与すべきか否か、という問題はこの判例を無視しては進められない。この判例を踏まえたうえで賛否の議論がなされるべきであると考える。
いろいろとこの判例を踏まえない議論が起こるのは面倒なので、あらかじめこの判例の要旨を説明しておく。裁判所のサイトによるまとめは「日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項は、憲法一五条一項、九三条二項に違反しない」というものであり、外国人への参政権付与を求めた原告の訴えを棄却したものである。従って一義的には外国人に参政権が付与されていない現状を追認している。現行の外国人参政権付与の議論もこの判例を踏まえて行われているのである。
明日以降、この判例の中身をみていきたい。とりあえず判決理由を全文載せておく。次回からはこれを逐条的にみていくことにする。

 憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものである。そこで、憲法一五条一項にいう公務員を選定罷免する権利の保障が我が国に在留する外国人に対しても及ぶものと解すべきか否かについて考えると、憲法の右規定は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び一条の規定に照らせば、憲法国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そうとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。そして、地方自治について定める憲法第八章は、九三条二項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和三五年(オ)第五七九号同年一二月一四日判決・民集一四巻一四号三〇三七頁、最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかである。
 このように、憲法九三条二項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(前掲昭和三五年一二月一四日判決、最高裁昭和三七年(あ)第九〇〇号同三八年三月二七日判決・刑集一七巻二号一二一頁、最高裁昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日判決・民集三〇巻三号二二三頁、最高裁昭和五四年(行ツ)第六五号同五八年四月二七日判決・民集三七巻三号三四五頁)の趣旨に徴して明らかである。
 以上検討したところによれば、地方公共団体の長及びその議会の議員の選挙の権利を日本国民たる住民に限るものとした地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定が憲法一五条一項、九三条二項に違反するものということはできず、その他本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に憲法の右各規定の解釈の誤りがあるということもできない。所論は、地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定に憲法一四条違反があり、そうでないとしても本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に憲法一四条及び右各法令の解釈の誤りがある旨の主張をもしているところ、右主張は、いずれも実質において憲法一五条一項、九三条二項の解釈の誤りをいうに帰するものであって、右主張に理由がないことは既に述べたとおりである。
 以上によれば、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。