本日の難問

ひきつづき随筆。説明文的随筆という分類だが、今一つピンとこない。論説文との境界があいまいだ。今日はそういう随筆。山崎正和「自己発見としての人生」より。これでまたアクセスが増える。山崎正和先生の文章を取り上げさせていただく。といってもよいしょも批判もしないという、無意味なブログ。

(中学校の「標準服」に反対し、兄弟全部に私服を着せて通学させた家庭の話を紹介し)この単純な反抗がはたして真の自由と個性につながっているかどうか、疑問だともいえるなぜなら第一に、人間の社会には一定の制度が不可欠のものであって、どのみち、個人はそのすべてに反抗して生きることは不可能だからである。現に、この家族も学校制度そのものには服従しているのであり、そのなかでなぜ制服にだけ反抗するのか、という根拠は必ずしも明らかでない。第二に、反抗による自由は、しょせん、消極的な自由にすぎず、皮肉をいえば、画一化の強制があればこそ成り立つ自由だ、と見ることができる。制服の制度があればこそ、私服の着用は個性の主張のように見えるが、そうでなければ、それは単なる習慣的な行為にすぎまい。

問題
「この単純な反抗がはたして真の自由と個性につながっているか、疑問だともいえる」とありますが、筆者がそう考える理由を、文章中の言葉を使って二つ答えなさい。
解説
一見難しく見えます。なんせ文章の意味を一読して分かる人は相当な読解力があります。こういう小難しい文章は必ず文の構造をまず押さえましょう。
よく見ると、この文章は次のような構造になっていることがわかります。「Aだ。なぜなら第一にBだからだ。第二にC。」
で、題意はAの理由を問うているのですから、解答はBとCを答えればよいことがわかります。具体的にいいますと、「第一に人間の社会には一定の制度が不可欠のものであって、どのみち、個人はそのすべてに反抗して生きることは不可能だから」の部分がB、「第二に、反抗による自由は、しょせん、消極的な自由にすぎず、皮肉をいえば、画一化の強制があればこそ成り立つ自由だ、と見ることができる」の部分がCです。文中において順番を表す言葉、たとえばこの文で言えば「第一に」「第二に」あるいは「まず」「はじめに」「次いで」「それから」「そして」などの言葉が出てくれば、それは筆者の論拠を列挙しているところです。従って読解を進める際に、こういう言葉をチェックしておく癖をつけましょう。
解答
「人間の社会には一定の制度が不可欠で、すべての制度に反抗することは不可能だから。」
「反抗による自由は消極的な自由にすぎないから。」
ポイント。上手な文章を作る必要はありません。それよりも問題文に「文章中の言葉を使って」とある以上、ほとんど引用でかまいません。成績がよい生徒ほど、勝手な作文をして失点します。