本日の難問

澤地久枝「三十五銭の盗み」より。

あの三十五銭の盗みというのは、いわば、わたしのその後の人生にかかっているような盗み、万引事件だったなと思います。盗んだことがよくないということは、それをだれにも気づかれなかっただけに、ふかくナイフできざみつけられたような記憶としてのこりました。

問題
「ふかくナイフできざみつけられたような記憶」とは、どういうことですか。「〜記憶。」という形で、二十字以内で答えなさい。
解説
まず、この問題が何を聞いているのか、を考える必要があります。これは悪問で、何を聞いているのかが不明確です。「どういうこと」という質問がそもそもあり得ない。何を聞きたいのだ?「どういう意味ですか」なのか「どういう内容ですか」なのか。
こういう比喩について「どういうことか」という問が発せられるのは、基本的に比喩の意味を聞いていると考えて下さい。別にそういうルールがあるわけでは決してないのですが、問題を作る人がいいかげんなことはよくあり、大体は比喩がらみの問題は、その比喩が直接的には何をさすのか、ということを聞いていることが多いです。だったら、そう書けよ。
比喩がどういうことを喩えているのか、ということを考えます。机に落書きをしたことはないでしょうか。私はしてました。すみません。ちなみに教師として私がびっくりした机への落書きは何といっても机に板書のノートを書いているやつでした。どうすんだよ、その「ノート」。持って帰れないだろ。で、「何しとるねん」と聞きますと、「ノートを忘れました」とのたまう。算数か理科かなんかのノートがあるやろ。というわけで書き直しさせました。それはともかく、消したくない想い出はどうするのか。♪机にイニシャル彫るあなた♪(斉藤由貴「卒業」より)という歌がありますが、彫るわけです。そうすれば消えません。
ということは「ナイフできざみつけられた」というのは「消えない」ことの比喩です。
解答
決して忘れることの出来ない記憶。
注意点
問題文に「〜記憶。」という形である以上、最後は「〜記憶。」まで入れましょう。解答は十六字ですが、二十字以内という指定の場合、十五字を越えていればOKでしょう。