さらに粘着

この問題について私なりの整理を行ないたい。というのは月曜日に着替えながらものすごく気になる言葉を小耳に挟んだからである。テレビの朝のワイドショーで福岡正行氏がコメントしていたのだが、その内容にいささか疑問を感じた。日ごろ福岡氏の鋭い学識から学ぶところの多い私としては、今回の福岡氏の議論には一言申し述べたい。
福岡氏はJR労組の告発をいけない、と言っている。私は断固やるべしという立場だ。「動労とかいろいろあるんでしょうけど」正しくは国労だ。「告発があるからメディアも取り上げるんでしょうけど、取り上げてはだめですよ」ということだ。そして締めの言葉が「一番の弱者は乗客なんですよ」。
まず今回の事故の原因に関する立場を整理したい。次の4点に分けられる。
1 事故の原因はJRにはない。これは当初JR自身が主張した立場である。置き石説をいち早く主張したり、車掌にウソの調書を強要したりしたのは、その立場に立つものと考えられる。
2 事故の原因は高見隆二郎運転手の個人的資質による。当初多く唱えられた説ではないだろうか。私の父親もそう信じていたようで、「運転士の資格のないヤツが運転していたんやな」と言っていた。ゲーム脳説や度重なる処分をことさらに言い立てるのはこの立場に立つことになる。
3 事故の原因はJRの技術的な問題点による。電車の軽量化を云々するのは基本的にこの立場だ。あるいはATS−Pの設置の遅れもこれである。
4 事故の原因はJRの労務管理にある。日勤教育や、遅れに対する厳しさ、利益優先の体質などがこれだ。ちなみに私は中山寺駅に停車するようにダイヤを改正した後にも運行時間を変えずにいたのは3と4にまたがる問題だと考えている。そのような無理なダイヤを設定すべきではないし、同時にそれを運転士に押し付け、さらに日勤教育でしばるべきではない。
私は4を中心に考察すべきと考える。当然2・3も要因の一つではあるが、最も重視すべきなのは4だという立場だ。なぜかというと、2ならば、これは特殊な事故であり、再び起こる蓋然性は小さい。3ならばJRも必死に改善を図るだろう。問題は4である。JRが4の問題点を自主的に改善する可能性は小さい。従って4の問題点を第三者が取り上げなければ、2・3の改善のみで終了するだろう。そして4の問題点は残されたままになる。それでは事故は再び起こる可能性はなくならない。
福岡氏は4の要因に目をつぶれ、といっているに等しい。「乗客が一番の弱者だ」というのはその通りである。であればこそ、2・3・4全てに目配せするのが当然ではないのか。さらにいえば、4はJRが絶対に自主的には手を付けたがらない分野である。とすれば、マスメディアが取り上げないで誰が取り上げるのか。「メディアが取り上げてはダメですよ」という発言は、JR最大の暗部に目を背けさせ、事故の可能性を完全に克服する努力をも放棄させ、ひいては「最大の弱者」である乗客を危険にさらす発言だと言わざるを得ない。このような閑古鳥の鳴いているブログで発言して何になるのか、という気はするが、それでも言わざるを得ない。