博士になりたい

私は子どものころエビ博士になりたかった。算数がからっきしダメで、その夢は儚く潰えたが。
最近見た記事で、男の子のなりたい職業の第三位に学者・博士があったそうで、私は博士ではないが、学者で、一応人気職業なわけだが、何でも現実と理想を知っておくことは悪くないだろう。
博士・学者といっても千差万別である。私の場合現在のところ学位は「修士(文学)」であるが、一応博士課程は出ている。この「出ている」という表現が極めて微妙だ。私の最終学歴は一応「大学院博士課程後期課程単位取得退学」となる。「単位取得退学」か。「中途退学」と同違うのだ。あるいは「修了」と同違うのか。
「中途退学」は入ったが、全ての単位を取得せずに退学するケースである。当然学歴としてカウントされる。「○○大学中途退学」という学歴である。
「修了」というのは「卒業」と同義。学位を取得した場合に使われる。
「単位取得退学」が微妙だ。三年の年限と必要単位は全て取得した。ただ博士論文を提出していないだけだ。だから博士学位は取得していない。しかし単なる「修士(文学)」でもない。中ぶらりんなわけだ。私みたいなのを歴史学界では「権博士」(ごんのはかせ)と言う。
なぜ私は「博士(文学)」を取得していないのだろう。それは「文学博士」の権威と関係がある。一口に博士と言っても様々だ。理工系の博士学位は取りやすい。ところが、「文学博士」は「碩学泰斗」の取るものだったのだ。若手が取るわけには行かなかった。意味不明ですね。意味不明なんです。そんなアホな理屈、国際的に通るわけがない。留学生が困るわけだ。日本の大学院に留学したが、博士学位が取れなかった。さぼってたんとちゃうか、と思われても仕方がない。「いや、日本では文学博士は碩学泰斗がとるもので以下意味不明」となるわけだ。これではあまりにも気の毒、ということでもないだろうが、様々な事情があって、学位も改定され、そもそも表記もそれまでの「文学博士」から「博士(文学)」という風に変わった。で、取ることになったのだが、私はその端境で、私の同期で取った人はいないのだ。そもそも出す窓口もなかったし。私の大学は三年しかいさせてもらえなかった。今は四年いさせてもらえる。で、三年経った段階でほっぽり出され、「博士」に成り損ねた、ってわけ。私が今後博士になるためには「博士(文学)○○大学乙○○号」を狙わなければならない。分かりやすく言うと論文博士だ。ちなみに「博士(文学)○○大学甲○○号」の場合は、通称「課程博士」と呼ばれる。
ちなみに私は「教授」ではない。よくレポートの担当教員名の欄に「○○教授」と書いてあって、笑ってしまうのだが。大学教師のランクには色々あって、一番上が「教授」以下「助教授」「講師」だ。「講師」には三種類あって、「専任講師」「常勤講師」「非常勤講師」である。私は「非常勤講師」だ。週に二日大学に行って抗議もとい講義をする。それだけでは食えないので他にバイトをするわけだ。他のバイト方が実入りが良い。私の大学の月給を言ったら「コンビニの方がいいやん」と言われた。当然だ。月二万五千円!だからまじでコンビニのバイトをやる人も出てくる。他に新幹線のパンタグラフの掃除、とか、高校の宿直とか、中華料理のコックとか。まあ高校の講師をやるのが多いが、今は少子化でどこの学校も人員減らしでクビになるケースが多い。だから私みたいに塾の講師というのは恵まれている方だ。
私の正式な職種は「フリーター」だ。以上、「学者」になりたい人に送る「学者養成講座」でした。それではご機嫌よう。