こういう間違いをしないように

渡部昇一氏「たら」「れば」の昭和史より

空母「蒼龍」艦長の山口多門は燃料タンクと修理施設への第三次攻撃を主張したのだが、機動部隊司令官の南雲忠一中将はその進言を無視したと言う。

山口多門ではなく、山口多聞山口多聞少将は海兵40期で、真珠湾攻撃当時「蒼龍」「飛龍」から構成される第二航空戦隊の司令官である。当時の蒼龍艦長は柳本柳作大佐で、山口少将は飛龍に乗艦していたはずだ。ささいなことだが、こういう所をいい加減にして、太平洋戦争から学べ、といわれても興醒めだ。
渡部氏に無視された柳本柳作少将について。海兵44期海軍大学校25期、一九四一年一〇月に蒼龍艦長として着任。ミッドウェー海戦で蒼龍と運命を共にする。海軍少将に一階級特進。

渡部氏の何がまずいのか、を言うと、山口多聞少将(戦死後一階級特進で中将)が蒼龍艦長ではないことは、調べればわかることだ。というよりも、そもそも第一航空艦隊による真珠湾攻撃を論じようとする時に、それに関する基礎知識を調べない、というのは、それを扱う意味が問われているのだ。しかも山口多聞といえば、結構有名人ではないか。だから渡部氏もその建言を採用したのだろう。しかし肝心の山口中将について何も調べていない、では何のために氏が山口中将の言葉を持ち出したのか、私には理解できない。
主張が正しければいいではないか、という意見もあるだろう。それは違う。もし主張が大事で、ディテールなどどうでもいいのであれば、そもそも山口中将について言及するべきではない。自分の主張にあわせて事実をわい曲している、ととられても仕方のないことではないだろうか。しかも、単純ミスである。少し調べる労を厭わなければ生じ得ないミスである。さらに言えば、氏はこれでいくばくかの原稿料を得ているのだろう。商業誌に掲載されていた記事だから。金を取って読ませる記事に、こんな単純ミス、というより怠慢丸出しの過ちがあったのでは、そもそも氏はどのような姿勢で文をものしているのかが、問われるのである。
ってお前はオタクかって?はい、そうです。元(いや?現役)軍事オタクで〜す。ただし帝国海軍しか興味ありません。アメリカ海軍の空母の写真集は買ったな。だから渡部昇一氏ファンの人は気にしないで下さい。あくまでオタク(軍艦フェチ)の妄想ですので。はい。