第一話

一月十六日、IT企業活力門強制捜査が入った。活力門が企業買収する時に使っていた投資事業組合を運営していたのはケイ・エム証券の副社長田中一だった。ケイ・エム証券にも強制捜査が入り、田中も捜査に立ち合い、午前三時に帰宅。
翌朝「しばらく帰れないかも知れないけど、大丈夫だから」と田中は妻夢子につげて出勤。五時半、田中から夢子に電話が入った。「今から帰れるみたいだから帰るね」。
しかし田中は帰宅しない。それ以降田中は消息を絶った。
一月十八日、田中は「ニシムラノボル」の偽名で那覇行飛行機に搭乗していた。田中は社長の島耕作に頼まれていたのだ。「泥を被ってくれ。しばらく身を隠していてくれ。報酬は約束するから」と。さらに「台湾への逃亡を手引きする人間が来るから那覇のホテルで接触してくれ」と言われ、那覇のカプセルホテルに向かった。
「山崎四朗 35歳 福岡市八女2−4−6」と宿泊カードに書いてチェックインした田中はすぐに薬局に向かう。「眠れないから睡眠導入剤ください」そして薬を受け取った田中は「これ効きますかね。眠れますかね」と尋ね、薬局を後にした。続く・・・。
人名を変更。荒岩一味という名前は他の人物に使いたくなったので。