ドラマ・活力門

第九話

夢子は荒岩の家にいた。夢子と荒岩の妻虹子、そして東山は荒岩の作る料理を囲んでいた。 「奇妙じゃ。向こうからは何も言って来ん。南部議員の関係者ともめたのですぞ。だからワシはあわてて土方竜元政友会副総裁と真田志郎外務大臣の事務所回りをして、南部…

第六話

田中の葬儀が終わって、夢子は放心していた。「あの沖縄の電話は?何が田中君にあったの?」 「ピンポーン」ドアのチャイムが鳴る。 「か、係長!」ドアの外には田中と夢子のかつての上司荒岩一味が立っていた。「な、何で・・・。」「葬儀の時にはゆっくり…

第八話

南部康雄衆議院議員事務所に亀有公園前派出所より連絡が入った。事務所職員が現行犯逮捕された、というのだ。逮捕された職員は黙秘しているというが、持っていた名刺から連絡がついた。「す、すぐに先生に連絡を」対応に追われる事務所。 一方金丸産業東京支…

第七話

種ヶ島恵は夢子の服を着て、田中と夢子の子の元輝を連れて歩き出した。やがて車の中から三人の男が尾行を始めた。それを見て工藤、奥別府もあとをついていく。 亀有公園にさしかかり、人通りが絶えた一瞬、種ヶ島は元輝を抱き上げ、走り出した。あとをつけて…

第五話

ニチフク新聞文化部記者荒岩虹子は福岡市内の小料理屋「きんしゃい屋」に、民政党衆議院議員馬場皆人の妻東子と向き合っていた。衆議院議員の妻が福岡に来る、ということで、案内を頼まれたのだ。総務省のキャリア官僚大黒秀一から直々の指名で荒岩記者が東…

第四話

野党民政党は昨年の九月十一日の総選挙で沖田十三総理の率いる政友会に惨敗し、党の建て直しを計っていた。そこに降って湧いたかのような活力門騒動。民政党幹部会はこの問題をどうするか考えていた。 「とりあえず代表質問で釣って見よう」楷恭介代表は活力…

第三話

「もしもし、田中さんの奥様ですね。私は身元は明かせません。ご主人の遺体の状況をお知らせします。傷口は五ケ所、喉の左右で頚動脈に達するもの、左右の手首、腹部です。法医学的見地から言えば自殺はありえません。頚動脈は一方を切れば一気に血圧が低下…

第二話

田中からの連絡が途絶えて二日、夢子のもとに沖縄県警から電話が入った。「ご主人が自殺されました」。えっ?自殺?沖縄?夢子には事情が飲み込めない。 沖縄に飛んだ夢子。田中一とのやりとりを聞かれ「しばらく帰れないかもしれないけど、大丈夫だから」と…

第一話

一月十六日、IT企業活力門に強制捜査が入った。活力門が企業買収する時に使っていた投資事業組合を運営していたのはケイ・エム証券の副社長田中一だった。ケイ・エム証券にも強制捜査が入り、田中も捜査に立ち合い、午前三時に帰宅。 翌朝「しばらく帰れな…