第二話

田中からの連絡が途絶えて二日、夢子のもとに沖縄県警から電話が入った。「ご主人が自殺されました」。えっ?自殺?沖縄?夢子には事情が飲み込めない。
沖縄に飛んだ夢子。田中一とのやりとりを聞かれ「しばらく帰れないかもしれないけど、大丈夫だから」というやりとりを県警に話した。
遺体と対面した夢子に県警の担当者は聞いてきた。「ご主人は右利きですか」「はい、そうですけど、なぜですか」「いや、ためらい傷がね、左手にあるものでしたから、一応念のために」
そこで警察が遺留品を出してきた。「一応、内鍵もかかっていましたし、ドアの内側にロッカーが横倒しになっていましたからね、密室状態なんですよ。事件性はない、と判断しますので、遺留品をお返しします。」コート、スーツ、ワイシャツと並んで夢子は血まみれのサッカーシャツに目を留めた。「このサッカーシャツ、これ、主人のものではないです。どこにありましたか」「ご主人の足元近くに落ちていたそうです」
腑に落ちないまま夢子は県警の用意したホテルに戻った。深夜、枕元の電話が鳴った。
続く。
お断り。この話はフィクションであり、実在の事件、人物、団体とはいっさい関係がありません。