灘の教育は歪んでいるか

最近東大医学部の中で遺伝病の人が出産することを非難する人がいたらしい。「らしい」というのは伝聞だからだ。そしてその出身高校の少なからずが灘中・高出身のようで、「灘はどんな教育をしているのか」という声が上っているようだ。
ちょっと待って欲しい。彼等は灘以外の教育を受けていないのだろうか。否である。むしろ学校ではそういうことを「いけないこと」として教える、はずだ。大学のレポートでも「学校は命の大切さを教えるべきだ」という論が出てくる。学校はそういうことを辛抱強く教えているはずだ。聞いていないのは生徒の方だろう。
医学部の学生の人生観は学校で作られたのではあるまい。半分は家庭の責任、もう半分は塾の責任だ、という話を塾の同僚と話していた。家庭の問題は私は知らない。最近の生徒の人生観に疑問を持つ事は多々あるし、「どういうしつけを受けているんだろうな」と思うことも多々ある。いきなり自分の都合だけを一方的にまくしたてる親には辟易する。そういう親の子供は大抵同じように自分の都合しか見えていない。ということがわかる程度で、実際のところはどうなのかは詳しくは知らない。もちろん大多数の親はまともだ。
塾の問題だが、こちらも断片的な噂話程度にしか私の耳には入らない。灘トップの某塾では成績が全て、とか、アンケートでA、AA、AAA、メジャーと昇格するので、講師は生徒に媚びまくっている、とかいう話を聞く程度だ。そして一部の私学関係者では「あの塾はできれば止めておこう」という声も上っているらしい、とか。
確かに一部のバカ親とバカ塾に影響を受けたら、そういうバカが増えるのもむべなるかな。ちなみに「バカ親」に育てられた「バカ息子」の実例を見ておきたい。血友病患者の作家が医師に相談した上で子供を作った時に「劣悪遺伝の子が生まれると分かっていれば、それを生まないように犠牲と克己の精神を発揮すべきだ」ということを宣う某学者がいるそうな。この人は「格差社会」の申し子で「高額所得者の税額を下げるべき」と説き「自助努力」を促している人なのだが、同時に「盧溝橋事件は蒋介石と日本軍を戦わせるために共産党軍が両方に鉄砲を撃った」として「シナ事変はすべて向こうが日本にしかけた」と言っている。戦争オタクとして言わせてもらえば、そういうことを知る前に山口多聞を多門と書き間違えないようにお願いしたいことと、蒼龍艦長ではなく第二航空戦隊司令官である、という基本的データー位は押さえておいて欲しいな、と思う位である。
で、そういう「自助努力」を声高に主張する人が「主人はお母さまや二人のお姉さまから宝物のように大事に育てられてきて、もうほんとにボタンも絶対に自分では掛けなかったそうですね。」とか「お風呂に入りましても、お姉さまとか、手がすぐに来まして背中を流してもらっていたんですね。だから結婚して最初のお風呂のとき、背中流せっていわれてびっくりして」とか奥様にばらされているのだ。こうした「非自立人間」が「自助努力」を説いている戯画的な例は、塾の生徒を見ている限り、結構多そうだ。