受験ストレス

進学塾で仕事をしていると、意外とストレスから落ち着きの無くなるヤツはいる。こいつ、学校ではしゃれならないだろうな、と思うこともある。塾は簡単だ。少しくらい厳しく接してもいい。最悪叩き出してもいい。私も目に余る時にはにっこり笑いながら「笑っているうちに何とかしてな。しまいにつまみ出すで」と言い渡す。だいたいこれでびびっておさまる。最近怒鳴ることは無くなった。あれ、怒鳴っても意味はない。相手はへそを曲げるだけだ。ちなみにつまみ出すつもりも無いのに「つまみ出すぞ」はだめ。見透かされる。子どもは敏感だ。だから本当に最悪つまみ出す心積もりは必要だ。私は「もう辞めろ」までは言ったことがある。これも相手が反抗的であれば退塾を塾長に申請するつもりだった。私に説教されている間、あわてて勉強する姿勢になっていたから「そんなことせんでええ。家に帰ってご両親と話しあえ。今のままでは周りに悪い影響しかおよぼさん」と宣告した。翌日から生まれ変わったのだが、そういう叱り方をここでいいたいのではない。
塾で落ち着きのない生徒には実は共通点がある。小学生の低学年から詰め込み型の教育を受けている点だ。ナチスだったかソ連だったか、そういう全体主義の情報機関での教育に使われていた教育方式らしい。それを小学生低学年からやると確かに効果はある。しかし落ち着きがなくなる。突然歩き出したり、訳の分からない理屈を述べ出したり、同級生をいじめたり。そういのを「成績がいいから」と放置すると、学級崩壊につながる。だから徹底的に力ずくででも押さえる必要がある。教育機関はその生徒の「治療」をする場ではない。その生徒の矯正に力を注いでいては他の生徒の邪魔になる。しかし学校では難しいだろうな、と思う。塾でも弱小塾では難しい。そういう生徒の親がまた難敵だからだ。自分の子どもの味方であることが多い。
小学生低学年からの詰め込み教育に対する風当たりは強い。そういう視点から、私のような進学塾そのものへの批判も当然あるだろう。それはある程度甘受せねばなるまい。しかし小学生低学年からの詰め込み教育に悩んでいるのは塾も同様なのだ。
私のいる塾は小学四年からだった。四年で勉強する姿勢を身につけ、五年で本格的に力をつけ、六年で応用力を付ける、という方針だった。しかしそれでは我が塾も生きていけないのだ。周囲のライバル塾は軒並み二年生から入塾させている。数年前から三年生クラスを新設した。今の六年生は二期生だ。三年生では勉強することの面白さを学んで欲しいと思っている。何も身に付けなくていい。しかし今のままでは一年生クラスを作っている塾も多いし、中々難しいものがあるな、と思う。悩ましいのだ。
少なくとも小学生低学年から詰め込み教育をすることは、私の経験上から言っても、どうなのかな、という思いはある。塾の関係者も悩んでいるのだ、ということを知っていただければ幸いだ。