MacBook Pro at Work 2

PowerBook at WorK』書評。
本書の第一章は「考える」「PowerBookを選んだ理由」という題が付されている。節として「DynaBookの理想」「PowerBook各機種の違いと特長」「筆者たちの機種選定の理由」が立てられている。
何といっても特徴的なのはDynaBookの考察から入るところである。これがこの書を通じた底流を為している。
DynaBookと言っても、もちろん東芝製のパソコンのことではない。「個人がコンピュータを独占できるなど夢のお話だった時代に、大人ではなくあらゆる年齢の子供たちが自由に使うことの出来るコンピュータ」としてアラン・ケイが提唱したコンセプトである。その上でこの部分を執筆した栗田伸一氏は次のように述べる。「子供たちでも簡単に使えるマシンの存在は必ずしも機械だけの問題だけではなく、教育制度や社会環境、労働環境、通勤事情などのさまざまな条件に左右される。近未来のパーソナルコンピュータ像を頭の中に描きながら最後まで読み進んでほしい」と。
本書はMacintosh誕生から8年たった1992年に書かれた。PowerBook誕生から15年経って誕生したMacBookシリーズは、アラン・ケイの提唱した理想にどれだけ近づけただろうか。
アラン・ケイが提唱した理想のコンピュータDynaBookについてケイ自身は次のように述べている。

マシンは本当の意味でポータブルでなければいけない。大きさは他の物と一緒に持ち歩けるくらいがよい。
効果的で、つかいやすいポインティング・デバイスが必要である
大きなハイレゾリューションの画面で、テキストとグラフィックスが同一画面で見ることができ、ハードコピーもとれること。
スクリーンに登場するオブジェクトは、実際の生活と同じように扱えたほうがよい。人々が自分の経験をそのままコンピュータの上で応用できるようにする。
DynaBookの完成には、きわめて高度な演算能力と、知性的なソフトウェアがなければならない。

MacBook Proは確かにポータブルである。当時のPowerBookシリーズは、最も軽量の100が2.3kg、他のものは3.1kgあったが、MacBookシリーズは最重量のPro17inchで3.1kg、一番軽量のMacBookで2.3kg。基本的には変わっていないのだ。ポインティング・デバイスは議論が分かれる。トラックボールトラックパッド。レゾリューションは大きく進歩した。演算能力も大きく進歩しているはずだ。68HC000の16MHzから68030の25MhzまでのCPUと、現行のIntelCoreDuoの1.83Ghzから2.16GHzまでのCPUでは相当程度違うだろう。当時のスーパーコンピュータくらいはあるはずだ。
しかしこれで大きく変わったのか、という点については、考えなければならないだろう。次はその点について考えたい。