非正規雇用

正規雇用者の問題は大学教員に限らず、現在の格差社会問題の根幹をなしている。格差社会論批判としてよくあるのが、現在の低所得者もパソコンを持ち、それなりに生活していけている、という議論だ。しかし問題となっているのは、非正規雇用の拡大による将来への不安と数字上における貧困層の増加である。
現在大学では非正規雇用の教員がかなりを占める。特に文学部史学科というあまり実学的でない学問の置かれた現状は厳しい。現在語学教師くらいしか雇用の道筋は描けない。留学生に日本語を教えるのである。しかし語学教師自体が非常に雇用は不安定である。需要に波があるため、非正規雇用者を多く雇用することで、人数の調整を行おうというのである。さらにその年限を限定することで需給関係を調整している。さらに現在某大学では人材派遣業の会社を作り、そこから派遣する、という形態をとろうとしている。現在大学の語学担当常勤講師はおおむね年収600万円。しかし派遣業界からの派遣という形をとることで300万円に削減する。この方式が全国の大学に広がれば、多くの語学担当の大学教師は失業するだろう。これが大学に流行する「改革」の中身だ。
さらに現在の大学における教員の立場も変わりつつある。某大学では常勤講師に変えて嘱託講師上級講師ポストを設置した。常勤講師とほぼ同じランクとされる上級講師ポストだが、常勤講師との違いを見れば、その大学が教員に何を要求しているのかが見えてくる。具体的には上級講師には常勤講師に保証されていた研究室や研究費がなくなる、という。つまり研究者性の否定である。教育していればいい、というものだ。これは以前書いた関西大学の理事長の発言、「学費は教育費に使う」というものと共通している。基本的には3年後には確実に辞めるという制度である。これについて大学側は人材の流動化による活性化を挙げるのだが、どう考えても非正規雇用者の増加が大学の活力になるとは思えないのだ。確かに私みたいにとりあえず職を探している人間にとっては門戸が広がるので歓迎すべきかもしれない。しかし考えてみれば分かるのだが、任期終了後どうするのだろう。最近の傾向として再雇用を行わないケースが増えている。とにかく流動化がキーなのだ。とすれば、また数年後には職探し。これでは結婚もできない。私はすでに結婚しているので、以前にも書いたがヨメともども路頭に迷うわけにはいかないのだ。現状では大学の専任教員にこだわる積極的理由が見いだせない。