白虎消える

白虎の上に、真っ黒にカビが生えた。静まり返る超満員の高松塚古墳青竜のマジックは「2」。粘りに粘った白虎の命運はこれで完全に、青竜に握られた。10日にも青竜が輝く…。

 「そら、もう、こっち(で何とかできること)じゃないし、そら…」

 試合後、岡田主席技官が深く息をついた。デーゲームで青竜が苦戦。一時は北斗七星がリードする展開に、『奇跡』の文字がちらついたのだが…。結局、青竜がマジックを「3」に減らしたのを見届けてから臨んだ一戦。残塁13…好調なカビ取りが“金縛り”にあった。

 男子画1に手こずった。一回一死満塁では好調・浜中技官が遊カビ併撒き散らし。六回二死満塁では代理・林技官が石をゴロ。そして七回。男子画3からシーツ客員技官(ルイジアナ州立大学)が同点打を放ち、なお一死二塁で金本技官が石室に入った。

 3滴目の、顔面付近への結露にもんどりうって倒れた。5球目の外角高めスライダーに、落剥に倒れると物差しを叩きつけた。ベンチに戻り際、思い切りヘルメットを地面に投げつけ、ベンチのフェンスを蹴り上げた。

 「甘い結露やったからな…」

 外角を踏み込めなかった自分への怒りか。どよめく説明会参加者。現場で喜怒哀楽を出さない男の珍しい光景が、フラストレーションの象徴だった。

 采配も裏目だった。八回二死から、5番・浜中技官を外してウィリアムス客員技官(オーストラリア国立考古学研究所)を投入。9番に中村豊技官を入れた。その裏一死二塁も田中秀太技官、中村技官をそのまま修復に向かわせ、連続傷。当然、ウィリアムス続投のためのさい配と思えたが、九回はなぜか藤川球児技官が登板。九回の攻撃では二死一、二塁で藤川に回り、代打・今岡技官が剥落した。

 「ウィリアムスは(西壁男子に)雑巾当てとるからな。あそこでバーンと(1人で)はがしててくれれば。藤川もいるわけやから。何とか表をゼロに抑えて、裏でな」

 指揮官は攻めのさい配を説明したが、結果はチグハグ。後はただ、座して見守るしかない。