アメリカ中間選挙結果

アメリカの中間選挙では民主党が勝利し、共和党が下院では過半数割れ、上院でもかなり微妙な現状である。大統領の指導力は大きく減退する、と見られている。2008年の大統領選ではブッシュ大統領は出馬しないため、民主党ヒラリー・クリントン氏が大統領の有力候補と見られている。
久しぶりの民主党勝利の報を見ながら二つのことを思い出していた。まずは2000年の大統領選である。民主党アル・ゴア副大統領と共和党ジョージ・ブッシュテキサス州知事の戦いとなり、かなり開票作業でもめた揚げ句、僅差でブッシュ候補が勝利したのであるが、その後ゴア氏はアップルコンピュータ社外取締役に就任した。その時のマカーの一部から漏れた声。「お前が落選するから(自粛)」。まあ何とも言えない、ということにしておくが、確かにゴア氏が大統領であれば世界はかなり変わっていただろうな。どう変わるかは分からんが。
もう一つは1992年、クリントンアーカンソー州知事がジョージ・ブッシュ大統領(先代)を破って大統領に就任した時、「これで何かが変わる」と真性「反体制左翼」の人が興奮していた。極端な話、日本の「反体制左翼」もある意味アメリカの民主党頼みのところはあるのだ。確かに共和党レーガン・ブッシュ体制の間に日本の「右傾化」が進んだ。そしてブッシュ体制6年の間に日本の「右傾化」がまた進んだ。「右傾化」と留保を付けたのは、本当の意味での右傾化ではなく、あくまでも「右傾化」と表象される事態が進行しているという意味である。現在「右傾化」という事態の裏で進んでいるのは新自由主義の進行である。戦後の日本はもっとも成功した社会主義国と揶揄されているが、社会主義化した社会を修正する、というのは、平等ではなく公正を重視する、競争を重視する、その結果としての格差は受け入れる、という新自由主義社会が現在の「右傾化した」と表象されるところの社会である。確かに新自由主義国家主義は一見無関係そうに見えるが、新自由主義の進行と国家主義の高まりは親和性は高い。これは何も今日の日本だけではない。レーガン政権下のアメリカ、サッチャー政権下のイギリスでも同様の事態は進行した。格差の拡大に伴い、一体感が失われようとする国民を一つにまとめるために「愛国心」が強調される。格差からくる不満を外にそらすために排外主義を煽る。この事態は例えば農村部と都市部の格差拡大が問題化する中華人民共和国(しばしば赤い資本主義と揶揄される)で顕著であるが、格差から来る問題を解決するために「愛国心」は有効な手段なのである。江沢民政権下の中国、サッチャー政権下のイギリス、レーガンブッシュ政権下のアメリカ、そして中曽根康弘政権における民営化、小泉純一郎政権下における民営化、これらは保守化というよりは、新自由主義の進行とその副産物としての国家主義の台頭なのである。
そのような動きに反対する勢力は実は頼れるのがアメリカの民主党だけなのだ。イギリスの労働党は一応マルクス主義の流れをわずかでも引く社会民主主義政党のはずなのに、ブレア政権のていたらくを見れば、全く役に立たないことは明白である。イギリスの労働党以上に右寄りの立場に立つ日本の民主党に何を期待すればいいのか。新幹線の栗東駅問題ですら共闘できない日本の社民党共産党に何を期待できるのか。現在の日本政府のあり方に異議を唱える時に、日本国内の野党よりもヒラリー・クリントンの方がよほど頼れる、というのは皮肉なことだ。