2000人の根拠

石原慎太郎東京都知事阪神大震災自衛隊の出動が遅れたために2000人の犠牲者が増えた、と発言している。例によって批判と擁護が行われている。私自身は、と言えば、石原氏が2000人という数字の根拠を出すまでは何とも言えない、としか言い様がない。死者6000人近くのうち、三分の一に当たる2000人近くの人が、自衛隊の迅速な動きで救われるほど長時間がれきの下で生存していた、ということは、私の伯母が犠牲になった様子を見聞する限り、かなり可能性は低そうであるが、それは私の個別的な事例にすぎない。もし石原氏が何らかの具体的な根拠を持っているのであれば、そうなのか、と思わざるを得ないだろう。具体的な根拠が出ないのであれば、それは問題なのだが。
被害者は被害者は結構長い間生きている、という元自衛官の方のブログもあったし、実際そういう例もあったであろう。当時自衛隊の出動が4時間後だった、ということも事実であり、その問題点を検証することは必要だ。しかし問題は2000人という数字を出した点である。自衛隊の初動の遅れ、という問題点を指摘したいのであれば、根拠のない数字を出す必要はないからだ。根拠のない数字を振り回す、あるいはそれを擁護することで、その人の説得性は著しく減退する。だから石原氏は自身の議論の説得力を保つためにも、数字の根拠を出した方がいいだろう。もし2000人が本当に自衛隊の出動が速ければ命が救われていた、というのであれば、それは大きな論点となるからである。逆に具体的な「データ」を出して、それが無根拠であれば、あるいはそれを根拠もなしに擁護しているのであれば、言論そのものの質が問われるのである。
だから石原氏を批判する側はそれを頭ごなしに否定するのではなく、まずは根拠を求めるべきだろう。石原氏を擁護する側はその根拠を示すべきだろう。もちろんそれはしっかりした客観的なデータでなければなるまい。