B層

2005年の総選挙、B層という言葉が取りざたされ、有権者をバカにしている、という批判の声があった。小泉支持者はIQが低い、と言われている、というものまである。実際よく読むとそんなことは一つも言っていないことがわかるのだ。
「B層」とは、総選挙の宣伝戦略をどうするか、という問題であり、そのことを検討するために作られた模式図である。座標軸の横軸に構造改革に対する賛否を取り、右に賛成、左に反対を配置する。縦軸にIQ軸を取り、上は高い、下は低い、としたのである。そして右上、つまり構造改革に積極的でIQ軸の高い群をA、右下、つまり構造改革に積極的でIQ軸の低い群をB層、構造改革に消極的でIQ軸の高い群をC、構造改革に消極的でIQ軸の低い群を無印としたのである。そしてB層にフォーカスした選挙戦略が必要だと主張したもののように私には思えるのだ。
問題があるとすれば当然「IQ軸」という取り方であろう。私ならば別の言い方を考える。つまり情報量の差で縦の座標軸を構成するのだ。例えば「ITQ軸」とか。ITの使い方による分け方。社会的地位が高くてもITには不慣れな人は多い。そういうのもB層に入れる。別に厳密な定義は必要ない。そもそも「IQ軸」自体根拠があやふやだ。要は「IQ軸」という言葉さえ使わなければいいのだ。
そしてその分析自体は非常に説得力がある。当然だ。その選挙戦略に従って戦った自民党が圧勝したのだから。
問題は野党である。野党の選挙戦略は要するにC層にフォーカスしていたのだ。ガチの野党支持者にフォーカスした選挙戦略など無意味だった。野党はそこを見誤ったのだ。A層もいわばガチで自民党支持なのだ、浮動層にフォーカスする、という戦略が正しかったのだ。負けた後にそれを「有権者をバカにしている」とか言ったところで繰り言でしかない。相手の成功例に学ぶべきだったのである。
もちろん安倍内閣石原都政に対する批判は最大限なされるべきである。しかしそれは的確な批判でなければ無意味であるだけでなく、有害ですらある。そして往々にして的確な批判は地味なものなのである。