ネットイナゴ

最近でははてブにおける否定的コメントも「ネットイナゴ」として批判されている(http://www.excite.co.jp/News/society/20070614201922/JCast_8437.html)。しかしコメント欄を炎上させる行為と、はてブにおいて否定的コメントを記すことを同列に「ネットイナゴ」とするのは、問題をあいまいにしてしまう恐れ無しとはしない。「ネット右翼」という概念が無限定に使われた揚げ句にカテゴリーとしての意義を失ったことを想起すればいい。定義を無限定に使うと、行き着く先はその定義の無効化でしかない。従って私には、はてブにおける否定的コメントは別の概念で分析されるべきだと思われる。
一応ネットイナゴに関する定義をはてなキーワードから抜粋しておく。これの出典はekken氏の「http://d.hatena.ne.jp/ekken/20060524/p1」である。

自分の意見と異なる主張をする者に対して、相手の考えが変わるまでコメントを続ける者
自分が直接コメントスクラムに参加しなくても、それを焚き付ける行為をする者
他人のサイトが「炎上」するのを見て喜ぶ者
炎上」しているブログに対し、尻馬にのって罵倒コメントを残す者
それが恥ずべき行為ということを分かっていない者
単なる荒らしと異なるのは、コメントの際に意味不明な単語の羅列などは行わない事

ちなみにウィキペディア炎上 (ネット用語) - Wikipedia)では以下の通り。

ネットイナゴとは、ネット右翼に変わってインターネット上で荒らしを行なう人物に対して使われることもある用語。

ウィキペディアにおける「荒らし」の定義は概ね以下の通り。

場の目的にあわないメッセージの送出。
意味不明な文字列や、意味のない文章の連続投稿。
煽りや釣り行為を含む、その場の参加者・運営者への誹謗中傷。
自作自演行為。主に第三者のふりをして自分を擁護する発言をし、自らの行為を正当化しようとする場合に行われる。
そのコミュニティの中核を成している人物のハンドルやそのサイトの管理人を騙り、意図的に他の参加者を錯乱させようとする、成りすまし行為。
意図的に、かつ過度に繰り返されるマルチポスト行為。
ある特定の物や人物に執拗にまとわりつき、嫌がらせなどを繰り返す粘着行為。
荒らしプログラム(PerlDUKE・ドールリカ等)を使用した長時間に及ぶ迷惑投稿、またはDoS攻撃を行い、サーバをダウンさせ、ネットワークを使用不能に陥れようとする行為。
無修正ポルノ画像、児童ポルノ画像等、わいせつな画像を投稿する行為。管理者が掲載を放置しているとスポンサーサイト、サーバーユーザー側のほうで強制的に閉鎖させられる場合がある。ただしこれらは荒しを逸脱した完全な犯罪である。

これらを見る限り、「ネットイナゴ」という行為は「荒らし」行為を伴う、ということが言えそうだ。「荒らし」行為とは、対象のサイトに直接行為を及ぼすことを言うようで、はてブにおける否定的コメントは「荒らし」行為を誘発する可能性はあるものの、はてブが直接行為を及ぼすわけではないので、これを「ネットイナゴ」と定義するのは、いささか厳密性を欠く定義だろう。
池田氏が遭っている被害は「ネットイナゴ」ではなく、別の呼称を考えるべきだろう。その方がおそらく池田氏の困惑をより的確に表現できるし、また対処法も見つかるのではないか、と思う次第である。
池田氏が出会った災難は、むしろウォッチブログと同様のものとカテゴライズした方がいいのではないだろうか。直接行為を及ぼすものではないだけに、対処法は「無視」の一言に尽きる。確かに自分に対して否定的コメントが並んでいるのは気分のいいものではない。しかし「嫌ならば見なければいい」という態のものでもあるのだ。「見ない」「広めない」という対処法が有効だろう。ウォッチブログと異なり、トラックバックも飛んでこないだけに「無視」という手法で対応するのがもっとも有効であると思われる。
私ははてブのコメントは基本的に無視。ただ読んではいる。腹の立つこともあるし、感心することもある。これは一本取られたな、と思った時には言及する。有益な批判も多いからだ。しかし基本的にはスルーしておくべきものなのだ。はてブコメンテーターも別にかまって欲しいとは思っていないと思われるがいかがだろう。いわばネット上の独り言なのだ。自分にとって有益だと思えば、素直に反応すればいいし、気分が悪ければ放置すればいいだけなのだ。放置すると悪化する「荒らし」やネットイナゴとは、被害の質も異なれば、対処法も異なる。従ってこれも何か別の用語を考えた方がいいだろう。
ちなみに私自身ははてブが集まるのは結構楽しみで、はてブのコメントは参考にさせていただいている。
追記
早速のはてブコメント多謝。個人的に一本取られた、と思ったのはnikeadidas氏のこれ。

この理屈から行くと、はてぶで名誉毀損はありえないことになってしまう。不特定多数に公開されている以上、「独り言」ではありえない。もっと有効な論理が必要。

考え方の一つとして参考になるのはこれ(http://sinseihikikomori.bblog.jp/entry/249938/)。「当事者間で解決」ということの限界の指摘である。個人の対処法としては「見ない」「広めない」ということ以外には中々に難しいだろう。あとはシステムの問題。これはこれで考えなければならない問題ではある。特にはてなそのもののシステムとして匿名者に有利なシステムになっていることは、キーワード編集において匿名者が一方的に議論を迫る、とか、ダイアリーにおいて実名の人に対する誹謗中傷が堂々と行われているとか、様々な問題はある。これについてはまた議論が必要だろう。
私がこのエントリで言いたかったことはekken氏がはてブコメントで述べている「最近の「ネットイナゴ」の使われかたは間違っているよ!」ということにつきる。sampaquita氏の「はてなブックマークが目立つから槍玉に挙げられているだけで、単に否定的な言及を禁止したがっているようにしか見えないのがなんとも。」というのや、shidho氏の「池田信夫が「ネットイナゴ」の用語を間違って使っているというのはもっと広まっていい。」というのも、今読み返して思ったりする。
追記2
これいい!と思ったブクマ。
himajine no9氏のこれ。

結局、現実世界と同様の基準で考える以外に無い。侮辱・名誉毀損にあたるようなコメントに対しては法的措置を考え、それに至らない場合でも反論するとか、無視するとか。現実世界じゃ「話すな」とはならないものな。

追記3
これいい!と思ったブクマ。nikeadidas氏とは反対だが、どちらの意見にも尤もだと思う私はかなり意見がぐにゃぐにゃだ。

傍に人がいても独り言は独り言。聞こえる場所で呟いた人の自己責任は問われるべきでしょうけど、ツールとしてのはてブ名誉毀損を絡めるのは疑問かなぁ。