グローバル化は暮らしに何をもたらすか
今、中国の段ボール肉まんという中々刺激的な事件もあって、食の安全ということが、反グローバリズムを主張する人々だけでなく、様々な人々に認識されてきたのはよいことだろう。私が利用している共同購入会の関西よつば連絡会(関西よつ葉連絡会 | 産直の野菜、果物、お肉などをお届けします)の機関誌「ひこばえ通信」はいつも中々おもしろい記事があるのだが、最近ネットでも公開されているのを知った。最新号の記事(「ひこばえ通信」)について見ていきたい。
まず記事の構成。前書きで「世界の市場経済化は世界貿易機関(WTO)と二国間あるいは地域内の自由貿易をめざすFTA(自由貿易協定)あるいはEPA(経済連携協定)の二つの流れによって進んでいる。」という問題提起を行う。そして「モノだけでなく公共サービスも民営化」「生存権さえ脅かす地球規模の市場競争」「弱肉強食が顕著な二国間FTA/EPA」「農業生産現場でコムスン以上のことが」という4つの節からなる。
筆者はジャーナリストで脱WTO/FTA草の根キャンペーン事務局長の肩書きを持つ大野和興氏。
まず第1節の「モノだけでなく公共サービスも民営化」という節では公共サービス部門の民営化と規制緩和、対照的に知的所有権の開発企業の権限強化という形の市場化を指摘する。公共サービス部門の民営化については、三公社(国鉄・電々・専売)の民営化と郵政三事業の民営化が念頭に浮かぶ。もう一つの知的所有権の強化については、大野氏が例に挙げているのが「エイズ薬を安く使えるようにすると、開発した製薬会社が損をするので、特許権で縛って、アフリカやアジアの人々が安い薬を買えないようにする」というものである。これが実際に行われているかどうかは、別にして、近年知的所有権の強化が主張されているのは、少なくとも「市場化」と無関係ではないだろうな、と思う。
第2節の「生存権さえ脅かす地球規模の市場競争」では公共サービスの自由化つまり私企業化による危機を指摘している。公立小中学校も市場競争に巻き込む教育再編は私にも無関係ではないが、教育再生会議の渡辺美樹氏は教育に競争を持ち込もうとしている。非正規労働者の問題も市場競争の問題だろう。人件費の圧縮は教育産業でも急務であり、大学教員の外注化や非正規労働者化が急速に進んでいる。任期制教員というのは、失業予備軍であり、腰を据えた研究活動や人材育成ができるわけもなく、日本の学問は今後激しく劣化するだろう事は、大学関係者ならずとも想像が付くことだろう。
第3節の「弱肉強食が顕著な二国間FTA/EPA」では途上国の問題に論が及ぶ。フィリピンのマニラでは水道事業が外国資本によって行われており、その結果低所得者層が水を得られない、という事態が発生しているという。赤ちゃんや高齢者という弱者から犠牲が出始めているようだ。
第4節の「農業生産現場でコムスン以上のことが」では、日本とオーストラリアのFTA交渉の問題点を指摘する。農水省の予測ではオーストラリアとのFTAが締結されると、食料自給率が40%から30%に下がるということだ。企業に土地を明け渡す農地法改正も進み始め、農業が短期の利益目的で経営されるようになり、環境も食の安全も消し飛んでしまう、とまとめている。