閣僚

閣僚の問題は年金と並んで安倍政権の足を引っ張った。これは明らかに安倍政権のミスである。そもそも論功行賞人事と評判が悪かった。にも関わらずそういう人事を行なったのは、安倍総理が人事を握ることで求心力を保とうとしたことの現れであろう。これがその後も安倍氏の閣僚に関する行動を制約することになったのだろう。求心力を任免権で保とうとして、閣僚を切れずに事態をこじらせた。
典型的な例が赤城徳彦農水相の更迭。参院選後に更迭するのであれば、最初から更迭すれば良かったのだ。あれでより一層印象が悪くなった。参院選前に更迭しておけば、求心力は低下しても、あそこまでイメージを下げることもなかったはずだ。弁護するならば徹底的に弁護すべきだ。中途半端に弁護し、揚げ句に更迭という右顧左眄ぶりでは、信頼性は著しく損なわれる。
閣僚の失言やカネの問題が云々されるが、政治家のスキャンダルそのものよりも、それへの対応が不信感を買っている。陰謀論に立つ人はそこが根本的にわかっていないのだろう。年金問題と閣僚のスキャンダル問題に通有の問題は、官邸の右往左往ぶりである。官邸の無策ぶりが、まさにデリケートな政治運営を行なう資質に決定的に欠ける要因である。
最初に本間税制調査会会長と佐田玄一郎行政改革担当大臣の更迭で、任命責任をたたかれると一転して徹底的にかばう、という戦術に出た。ここが不可解なところで、問題の出た閣僚はどんどん更迭して、マスコミにたたかれようと「美しい国作り内閣は不祥事を許さない」とでも言っておけば、逆に拍手喝采だっただろう。ここでも安倍政権のクリーンな姿勢をアピールする絶好のチャンスだったはずだ。松岡農水相の問題が出た時に、松岡農水相をさっさと切っておけば、ここまでひどくなることはなかったはずだ。
安倍政権は閣僚を切ることで、求心力を失うことを恐れたのだろう。しかしそれは完全に裏目に出た。そもそも安倍氏参院選の顔として担ぎ出されたわけであるから、参院選を勝つことが至上命題だったはずだ。内閣そのものの求心力を気にしている場合ではないだろう。
ただ安倍政権の事情を忖度するならば、参議院現有議席のうちの改選議席は小泉フィーバーで獲得した、いわば「バブル」とでも言うべき議席だったのだ。改選議席を減らすのは避けられない。勝敗ラインのハードルが高くなる。特に安倍氏にとっては、総裁選で圧勝できなかった、という事情がある。安倍内閣は閣内反主流派となりかねない麻生太郎外相という存在を抱え込んだ。個人的には蜜月関係にあっても、麻生外相の背後にいる河野洋平衆院議長らの存在はあなどれない。さらに谷垣禎一財務相の存在は意外な善戦で、閣外反主流派としての存在感を保持した。安倍氏の焦りの背景にはこういう潜在的顕在的な反主流派の存在があった、とも言える。