著作権問題

某中学の2006年度の問題を受験指導で使おうとしたら、第2問が本文省略だった。別役実氏の評論文である。2006年度の問題ということは、2006年1月に出題された問題であり、この年、別役実氏は「日本ビジュアル著作権協会」の活動に賛同し、四谷大塚日能研を訴えていることで知られている。2006年に実施された共通テストでも別役氏の評論文を使い、その結果赤本などでは第一問の評論の本文が削除される、という事態が起こっている。
少し前に著作権の問題でテキスト*1が大幅に差し替えられる、ということがあった。教材会社が年度途中で慌てて差し替えたのだ。これは受験業界の著作権問題に対する鈍感さを象徴するものではある*2が、今までのテキストを廃棄して新たなテキストを作り直した方がましなくらい、削除された作家の著作権料が高い、ということでもあるのだろう。新たに採用された作家にも当然著作権料は支払われているはずだからである。
こういう事態を受けて入試でも対応が為されているようで、そもそも受験に自分の作品が使われることを快く思わない人の作品を使うことはないだろう。お互いが不幸になるだけだ。そういうわけで最近使われる作家の傾向が固まってきている。かつて常連だった杉みき子氏や谷川俊太郎氏はまず出てこない。とりあえずここ(「http://www.jvca.gr.jp/kaiin/index.php」)に掲載されている人の作品を使う時には慎重にならざるを得ないだろう。実際湯本香樹美氏やねじめ正一氏も教材では目にすることが多いが、入試では目にしない。今はやりはなんと言っても重松清氏だ。森絵戸氏、あさのあつこ氏、角田光代氏も注目。というわけで、機会があれば近年の阪神間の中学入試で使われた作家を集めてみたい。2006年1月実施の入試で別役氏の文章非公開ということが起こり、それを受けて入試の素材に変化があったのか、ということを見られれば、と思う。

*1:塾のオリジナルではない。教材会社で販売しているもの。

*2:今まで著作権にひっかかることをしていたわけで、これはこれで問題だと思う。塾での教材に関してはそれ相応に対処すべきなのは言うまでもない。