橋下大阪府知事の勇気ある発言

断っておくが私は橋下氏の言動が大嫌いである。橋下氏を評価するのははっきり言って嫌である。だからこそ橋下氏の発言を基本的には批判しないようにしているし、橋下氏の発言で評価できると思われたものは積極的に取り上げる。
今回は橋下氏の教育に関する発言(「http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080213-00000128-mai-pol」)。私はかねてより橋下氏の教育に関する発言はある意味高邁な理想論だと思ってきた。中々実現は難しい。難しいのは何も日教組という抵抗勢力があるから、ではないのだ。

大阪府橋下徹知事は13日、就任後初の定例記者会見で、知事選の公約として掲げた習熟度別クラス編成導入や府立高校の学区制撤廃について、「机上の空論だった」と述べ、根本的に見直すことを表明した。橋下氏は同日午前、中退率の高い府立高校などを視察して認識が変わったと説明し、「(学区制や学校給食導入は)議論のところで終わるような話だと思っている」と、実現性に自ら否定的な見方も示した。
橋下氏は選挙中、小学校に習熟度別クラス編成、中学校に学校給食を導入し、府立高校の学区制を撤廃すると訴えていた。さらに知事就任後も報道番組などで、特に習熟度別クラス編成を導入する考えを表明した。
しかし、会見では「自分の教育論はすべて、現場を見ずに頭の中で考えていた」と釈明。今後、知事直轄のプロジェクトチームや府教委と公約について議論し、その結果、実現できないとの結論が出た場合は、撤回する考えを明らかにした。

橋下氏が「中退率の高い府立高校などを視察して認識が変わった」「現場を見ずに頭の中で考えていた」と自己の過去の発言を相対化して発言できるところに橋下氏がかなり柔軟で現実的な政治的手腕の持ち主である、ということを私は感じた。橋下氏が「現場を見ずに頭の中で考えていた」と自身を批判したところは、むしろ今の教育改革論議そのものに向けられるべきものであると思われる。橋下氏の発言はそれが自身に向けられた、という点で、非常に示唆に富んだ発言である*1
追記
この記事(「http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802130080.html」)のほうがより詳しいので追加。

「現場を見ずに頭で考えていた。自分の教育論は『机上の空論』だったと反省している」
会見の冒頭、橋下知事が反省の弁を述べた。この日、初めて公立学校を視察、その「成果」を強調したのだ。
選挙中から「高校の学区撤廃」「学力別クラス編成」を提唱し、学力上位層の競争力を強化する教育改革に意欲を示してきた。9日には府の独自施策である公立小学校1、2年生の35人学級制について「効果に疑問がある」として府教委に見直しの検討を指示した。
13日に視察した柱本小では、子どもの理解の度合いに応じてクラスを半数ずつ2カ所の教室に分け、少人数で指導する様子を見守った。橋下知事は「40人、50人でも授業は可能と思っていた。現場を見て、少人数で手取り足取り教えることも必要だとわかった」。
その後の会見では、「ただちに持論が変わったわけではない」と語りつつ、「あまりの世間知らずに恥ずかしさを感じました」と反省。府教委などと議論を重ねていく考えを示した。方針変更の可能性についても「独裁者じゃありませんし。結論が妥当ならそういう政策になる」と話した。

赤字隠しが発覚した際は「職員性悪説」と府庁をやり玉に挙げたが、この日の会見では職員をねぎらい、暫定予算を編成した財政課への賛辞を繰り返した。
橋下知事が初当選した際、戦々恐々だった府幹部は胸をなで下ろす。「表で無理なことをぶち上げても、裏では落とし所を考えてくれている。仕えやすい上司や」

これをどうとるかはいろいろあるだろう。しかし私はいいように考えたい。

*1:公約にする前に現場を見ろ、という意見もあるだろうが、世間の教育改革論議そのものが現場を見ていないように思われて仕方がない。その意味で私はあえて橋下氏を今回評価してみた。