「関東新制条々」25−追加法364

25と26はそれぞれ「物具事」「衣裳事」と題されている、いわば細則であるが、細則であるだけに長すぎる。従って何回かに分けて収録する。

一 物具事
上下諸人、蒔絵金銀剣刀并鞍豹皮切付、及銀鐙轡可停止之。於流鏑馬者、非制限。轡者交銀事、中心以下不可過三両。但貢馬以下御馬御覧之時、用銀轡非制限。又剣者所々交銀事許之。但不可過五両。腰刀目貫非沙汰之限。黒漆并貝鞍等同不可(虫損)餝。雖銅摸銀、其体相同。其実難弁。同可止之。

とりあえずここで話が切れるのでここで切る。
読み下し。

上下諸人、蒔絵金銀の刀剣ならびに鞍の豹皮の切付、及び銀の鐙・轡はこれを停止すべし。流鏑馬においては、制の限りにあらず。轡は銀を交えること、中心以下三両をすぐるべからず。ただし貢馬以下御馬御覧の時に、銀の轡を用いるは制の限りにあらず。また剣はところどころに銀を交えることはこれを許す。ただし五両を過ぐるべからず。腰刀の目貫は沙汰の限りにあらず。黒漆ならびに貝の鞍は同じく(ほにゃらら)を飾るべからず。銅で銀を摸すといえども、その体はあい同じ。その実は弁じ難し。おなじくこれを止どむべし。

「上下諸人」というのはこれは刀や馬具が問題になっている以上、御家人への禁止規定。蒔絵や金銀で刀剣を飾り立てることなどが禁止されている。馬具も銀の仕様が制限されている。ただしいくつか例外規定があって、鐙に銀を使うのは流鏑馬の時には許される、とか、轡に銀を使う量を三両以下に制限されるのも、貢馬などの馬を将軍が「御覧」の時には制限外などがある。ちなみに「両」というのは質量の単位で、一両=37.3グラム。従って轡については111.9グラム以下、刀への銀は186.5グラムまでは許容範囲だった。銅を銀に模倣するのは実際に銀を使っているかがわからないので禁止されていることが面白い。