表現の自由覚書5

営利的表現の自由について。営利目的でなされる表現活動が憲法21条1項で保障されるか、と言えば、される、というのが通説。国民が消費者として広告などを通じてさまざまな情報を受け取ることの必要性から、営利的表現の自由も、表現の自由として保護するに値する、と考えられている。もっとも表現の自由の重要性は、民主制の過程の前提となる自己統治の価値にあるが、営利的表現には自己統治の側面が希薄であり、また営利的表現は国民の生命・健康・財産を保護するために規制する必要性が大きく、そのため非営利的表現の自由よりも保障の程度は低い、と解されている。

あん摩師等法七条は、施術者の氏名・住所、業務の種類など同条一項所定の事項を除き、すべて広告を禁止し、列挙事項についても、広告が施術者の技能等に及んではならない旨を定めるが、これは、広告が患者を吸引するため虚偽誇大に流れ一般大衆が適切な医療を受ける機会を失うおそれがある、という弊害を未然に防止するためのもので、国民の保健衛生上やむをえない措置として是認されるので本条に違反しない。〔少数意見=商業的広告も表現の自由に含まれるので、虚偽誇大にわたらない適応症の広告まで禁止されるとすれば、違憲である。〕(最大判昭36・2・15)

表現の自由には自己統治の問題が要請されるのが法学の講学上の通説であることだけは分かった。