対訳『椿葉記』13

播州国衙は長講堂領の外にて、代々の御譲状各別なれば、国衙もおなじく返し申さる。〈国衙の奉行職は、光厳院の御時、勧修寺、朝恩に拝領して、御年貢を執沙汰申なり。〉同別納十个所もまいらせらる。おほよそ国衙の別納は数十个所あり。故院御管領にまかせて、惣をこそ御安堵あるべけれども、これも仙洞御管領あれば申たてらるゝに及ばず。この御領どもの中さへなを不知行の所おほければ、たゝ有名無実なり。

故院-崇光院
仙洞-後小松院

また播磨国衙は長講堂領に含まれておらず、代々の譲状も別なので国衙領も同じく返された。〈国衙領の奉行職は光厳院の時に勧修寺家が拝領して年貢をの収取に当たっていた〉。同別納数十ヶ所も返された。国衙の別納は数十ヶ所ある。崇光院の管領によれば全て安堵されるべきではあるが、これも仙洞が管領なさっていたので申し立てることはできなかった。この御領の中にも不知行の所が多く、有名無実であった。