第四話

野党民政党は昨年の九月十一日の総選挙で沖田十三総理の率いる政友会に惨敗し、党の建て直しを計っていた。そこに降って湧いたかのような活力門騒動。民政党幹部会はこの問題をどうするか考えていた。
「とりあえず代表質問で釣って見よう」楷恭介代表は活力門代表森渉を「我が弟です、息子です」と選挙戦で持ち上げた佐渡酒蔵政友会幹事長を突っつくことにした。
「昨年の衆院選で政友会は森渉社長を公認候補以上に応援しました。このような候補を利用して膨れ上がった政友会の議席粉飾決算といわざるを得ません。沖田総理をはじめ、特に『我が息子」とまで持ち上げた佐渡幹事長は道義的責任を免れることはできないでありましょう。」
案の定佐渡幹事長は噛みつく。「公党に対する侮辱のみならず、神聖なる選挙に対する侮辱である。懲罰動議を出したい」
楷代表はほくそ笑んだ。「ふむ、政友会はかなりこの問題に敏感になっている。続いては投資事業組合に関する問題だな」
楷代表の脳裏に一人の議員の姿が浮かんだ。耐震偽造問題で質問を連発している大阪府選出の馬場皆人議員だ。というのは耐震偽造マンションを分譲したヒューマンユーザー社の前田郷介社長に対する証人喚問の中で気になる人物の名前が浮上していたからだ。証言拒否を繰り返す前田社長の言葉の中で、馬場議員が持ち出したのは沖田内閣官房長官古代進の名前だった。古代官房長官の後援者の団体である古進会に前田社長が出席していたこと、そして沖縄で「自殺」した田中一が古進会の理事を務めていたことを思い出したのだ。楷代表は田中一「自殺」事件を調査することに決めた。