公教育塾

serohan氏のところhttp://d.hatena.ne.jp/serohan/20060418で話題になっている公立塾。これは塾講師としても何らかの見解を出さなければ、ということで。
結論から言うと、私はそもそも公教育にいささかの期待も持っていない。一人一人の現場の教師は劣悪な条件の中、よくがんばっていると思う。全く以て頭が下る。しかしどんな現場も管理者が現場を知らず、威張ることだけが目的と化した連中が実権を握れば、その職場は地獄だ。私はその意味で公教育には期待しない。次のような事例を見せられれば、誰でも、こんな管理者はごめんだ、と思うはずだ。

この数年間に(ほにゃらら)が行ったことは、とにかく校長を助ける、味方をする。校長に盾突く者、あるいは校長をいじめる者は徹底的に教育委員の権限において、決定的に校長のためにやったずであります。

ここでは校長の権限を強化することが主張されている。教育委員会としては校長の権限を強化するのも、方向性としてはありだろう。その次。同じ人の発言。

命令に従わない学校長がいたということは、これは決定的に重大な問題であって、そういうことが二度とあってはならぬと、私はそういうふうに考えるのです。そこで、あなたに一つお願いがあるんです。それは何をするかというと、教育委員会の方針に逆らった、あるいはそれに従わない学校長がいるのであれば、指導していただきたいということです。学校長に対して個別的職務命令書を出せと言ったのにもかかわらず、それに従わなかった校長がいるのであれば、それは規律違反ですから、指導部長がその校長を呼びつけて、そしておわびさせるということをやってもらいたい。それをやってもらえますか。私の指導に従わなかったことはまことに遺憾であるということをあなたが呼びつけて、そして高等学校教育指導課長の前で「今度から指導に従います」ということをさせることが、ほかの200校以上ある学校の中で非常に苦しんだ悩んだそういう校長もいたと思いますのでそういう人たちの励みになるから、あなたにそういうことをやっていただきたいと、こういうお願いなんです。これはお願いなんです。

ここでは自分の言うことに従わなかった校長をつるし上げろ、と言うことを主張している。この教育委員の意図は明白である。校長の権限を強め、そして校長を締め上げることで、教育委員の都合の好いように教育現場を操縦しようというのである。彼は自分の政治的主張の実現のために教育現場を引き回しているのだ。その政治的主張の如何を問わず、このような政治的主張のために教育現場をひきまわす輩はあとをたたない。このような政治ゴロに引き回され続ける公教育に期待など持てるはずがない。
公教育ではない、営利事業である塾では政治的主張は基本的にできない。それは社の業績に響くからだ。しかし現在の公教育で行なわれるような人格権の侵害は、塾による。ひとしなみにひどい扱いを受ける公教育とは話が違う。
先ほどのような権力丸出しの政治ゴロが教育委員として君臨する事例は特殊ではない。現在教育委員は現場を知らない、行政官僚が多く就任している。そのような人々に引き回されて、現場の教師は神経をすり減らし、過重な仕事に耐えながら、保護者からも突き上げられ、マスコミのバッシングの的となり、それでも子どもたちのためにがんばっているのだ。私はヘタレなので、そういう現実を耳にし、教職免許を取ることをあきらめた。今、教師をやっているが、もともと腰かけのつもりで始めて、何となく今まで続いているのは、塾との相性がいいからだ。
不思議だったのは、学校現場での教師に対する抑圧は私の周囲では周知のことであったにもかかわらず、周囲に学校の教師になりたい、という人々が多くいたことだ。現状を変えられる、とでも思ったのだろうか。現状はますます悪化しているのだ。
公立塾設置の構想は、小坂憲次文部科学大臣の人気取り政策のようで、そんなに深い政治的意図はないのかも知れないが、私はこの構想を聞いた時に、かつて塾業界に文部科学省がアプローチしてきたいきさつを想起した。文部科学省は子どもたちの放課後も抑えたがっているのかな、と思ったのだが、実際にはおそらく「格差社会」批判に対する小泉政権のレスポンスなのだろう。