工業分野

工業分野に関して一番難しいのはグラフと地図問題、そして伝統工業だろう。グラフが難しく思うのは、4大工業地帯の見分け方を知らないからだ。近年では3大工業地帯としてまとめている参考書もある。そういう参考書は捨てて構わない。入試の実態に即せば、どう考えても4大工業地帯で考えなければならない。だいたい「工業地帯」と「工業地域」とは違うのだ。そこのところをわかっていない参考書は他のところもいいかげんだ。グラフを見て、どの工業地帯がどのグラフなのか、を見分けられるようにしておこう。詳細は自分のところの塾の先生に質問してください。教えてくれるでしょう。教えられないようであれば、その塾に通うことを再考したほうがいいでしょう。
教えてくれない、とか、親がけちで5年生の時に社会を選択していなかったとかいう人のために一応説明しておくと、京浜工業地帯と中京工業地帯は自動車工業(日産の横浜、トヨタ豊田市)をかかえているので、機械工業が50%を超えている。一方で中京は一宮市津島市尾西市岐阜市などの繊維工業の町を抱えているので、繊維工業も4%位ある。京浜は1%を切っている。北九州と阪神はもともと製鉄業が盛んだった関係上、現在でも金属工業が20%前後ある。一方で阪神工業地帯泉南の繊維をかかえていたので、繊維工業の比率も北九州に比べると高い。つまり機械工業と繊維工業に着目すれば、おのずと分類できるのだ。
工業地域に関して、意外と知らない講師も多いようだ。ポイントは瀬戸内工業地域と京葉工業地域を押さえること。この二つは特徴があるので、出題されるのだ。瀬戸内は化学工業の比率が結構高い。京葉は化学工業が非常に高く25%に達する。逆に言えば東海工業地域や北関東工業地域が出題されることはまずない。これと言った特徴がないからだ。あえて言えば浜松市の楽器・自動二輪が問われる位か。何が出題され、何が出題されないか、なぜそれは出題され、なぜぞれは出題されないのか、を理解することが重要である。社会科は「暗記」と思われるが、やみくもに暗記すればいいものではない。むしろ物事を突き詰めて考察することが必要なのだ。特に教える側にはそういう能力が要求される。
地図問題は、これも出題されるものは限定される。工場の分布を問う問題だが、出るのは鉄鋼業と石油化学コンビナートを見分ける問題。これは類似しているが、本質的なところで一つ違いがあるので、製鉄業と石油化学工業の類似点と相違点を知っているかどうかが問えるのだ。ポイントは室蘭市。他にIC工場はシリコンアイランドがらみで、自動車工場は豊田市、北関東工業地帯、広島市を押さえているかが問えるので出題される。こういう風にそれぞれの工業の本質を押さえれば、無理に暗記する必要すらないことが理解できるだろう。
工業製品の輸入問題は、むしろ貿易の分野に入るので、そちらで詳論するが、これも本質を理解すれば、無理に暗記する必要もない。
強敵は伝統工業だ。これは暗記がある程度必要。どうしてもだめ、という人は東北地方の伝統工業だけでも押さえておこう。それを幹として、あとは和紙とか輪島塗とかを押さえれば結構何とかなるものだ。