1/3000

3000人に一人、というのはかなり稀な確率ではないだろうか。
私が今まで担当した大学生は3000人程度である。数えたわけではないが、例えば今年は600人程度の学生を担当することになる。この3年は600人ペースで、今まで十年大学教育に携わっている。大講義を担当しても9年。400人程度のクラスは多く担当しているので、概算すると3000人ということになる。
大講義ではどうしてもテストになる。テストでは一定時間経過したら受験資格を失う。我が大学では20分。テストの終わる15分前に来て「テスト今から受けたいんですけど。」とかのたまう。事務室に行かせた。こちらの一存で受けさせるわけには行かない。大学生には周知徹底させているはずで、他にも受けられなかった学生もいるはずなのだ。著しく公平性を欠くことになる。事務室にいけば、事情によっては追試験が受けられる可能性がある。ただしごまかせば、の話だ。後出しは基本的にNG。しかし急病とかなんとか言えば何とかなる可能性もないではない。
テストが終わる。事務室のある校舎前にそいつが待ちかまえていた。「だめでした」と。そらあかんやろな、とは思ったので「事務室がだめと言っている以上はどうしようもない」と回答する。「先生、遅刻の時間の件は言っていないですよね」とかいう。こちらに責任があるから受けさせろ、といいたいのだ。「大学から言われているはずであり、こちらで連絡する件ではない」というと、「聞いていない」という。で、「時間半分でもいいから」とか交渉してくる。こちらは「事務室を通さないとどうしようもない」の一点張りで通した。
事務室に問い合わせた。「周知徹底させてます」との回答。当然だ。そいつが聞いていないだけだ。そんな大事なことを聞いていない学生も初めてだが、それをこちらの責任に着せようとする学生も初めてだ。だから3000分の1。
ただ気になる傾向はある。講義を休んだ時に、「レジュメないですか」と聞いてくる学生が多い。大講義では300枚印刷して200枚残ることもざらにある。一回の講義で平均2枚のレジュメを刷るから、一回あたり400枚残る。それを15回分と考えれば、教師が6000枚のプリントを持ち歩かなければ学生のリクエストには応えられないことになる。そんな程度の想像力も喪失しているのだ。
そもそも講義を休んだのは自己責任。自分の裁量でレジュメ位手に入れて欲しい。しかもこちらは事務室のレジュメ棚に置いてあるのだ。それを言うと、「あ、見ていません」。まず教師のところにくるのな。
塾の同僚にぐちると、「高校まではプリントくれますやん」。確かに。高校までの教師と同じ、と思っているのな。と考えるとテストを受けさせろ、とごねた学生の言い分もわかるような気がしてきた。高校の教師ならば「しょうがないな」とか何とか言って、受けさせてくれるのだろう。つまり高校と大学の違い、というものが分からなくなっているということなのだろう。大学は自己責任だ。しかし今は社会も学生も高校みたいに面倒を見ることを要請しているような気がする。