神風の風景 第一章 敷島の大和心

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343航空隊が松山から鹿屋に移動することになり、司令の源田実大佐は鹿屋に出張していた。留守を預かっていたのは副長の中島正中佐。中島中佐のもとに佐世保鎮守府から電文が届いた。
「菅野直大尉を上官暴行の件にて取り調べたし。至急変更」
中島中佐は「ああ、あのことだな」と思い当たった。菅野大尉から中佐を殴ったことを聞いていたのである。中島中佐は直ちに返事をしたためた。
「菅野直大尉は本土防衛のため出頭の暇なし。たってとあらば戦闘機にてお相手する」
343航空隊は紫電改が集中配備され、パイロットも鴛淵孝大尉、林喜重大尉、菅野直大尉を隊長としていた。
中島中佐は菅野大尉を呼び、電文を見せて
「こんな次第だ。特攻隊の悪口を言うヤツは中佐でも大佐でも構わん。ぶん殴れ」
という。菅野大尉はさすがにばつが悪そうに頭を掻いている。中島中佐はさらに書き足す。
「この忙しいのに暇な泣き言を言ってくるな。殴られた本人にバカめとお伝えあれ」
そして
「この通り打て」と通信士に渡した。