小論文指導で言われたこと

私が小論文講座で言われた一番大事なことを忘れていた。それは「オレはちがわない」ということである。他人を批判したからといって、自己の正当性が確保されたとは言えない、ということと同じことであるが、あるいは他人を批判したくなった時に、その批判の対象に自分が入らないか、を考えること、というのと同じことだが、「オレはちがう」というのが多い、という指導であった。
似たような言い方として「エクセプト・ミー」というのもあった。自分だけは批判のらち外において、他人を批判する議論である。こういう論者は信用できない。つまり小論文で「エクセプト・ミー」の論理を使った瞬間、小論文の科目に関しては、完全に落第決定、ということである。
「エクセプト・ミー」の実例として私の義理の祖母の例を。「かしこい女はアホな男以下や」と私に語っていた。つまり女性の権利向上について反発しているのであるが、それを女性が言うのはおかしくないか、ということである。「アホな男以下」という「女性」に自分が入っていることを全く考慮していない議論。自分以外の人は批判するが、その時に自分はその批判の対象から外して議論をする。これはまさに「オレはちがう」という議論であり、それを戒めるのが「オレはちがわない」という言葉であった。批判は自分に向けられた時にこそもっとも効果を発揮する、とも言われたように思う。
「オレはちがわない」という言説の背景には「投影」という心理があるだろう。自分の中にあるおぞましいものを他者に「投影」し、他者への憎悪を煽る、というものだ。他者を声高に批判する人は、その批判はまさに自分に相当する、ということである。
「オレはちがわない」という言葉は、私が文章を書く時にはなるべく自戒するようにしている言葉である。