ひこばえ通信紹介

月に一回の「ひこばえ通信」(「ひこばえ通信」)の注目記事を紹介する。
今回は京都大学原子炉実験所の小出裕章氏の「再処理工場って何がモンダイ?」。
六ヶ所村での核燃料再処理工場についての論考。核燃料再処理工場は原子力発電所で使用済みになった核燃料の後始末をするための工場と思っている人は多い、しかしそうではない、という指摘から始まる。
「再処理工場とはもともと軍事工場」という項目で再処理工場とは何か、という説明が行なわれる。長崎に投下された原爆はプルトニウム形原爆であるが、その材料を作るための最高度の軍事工場だった、という。日本はイギリスとフランスに委託してきたのであるが、英国ではアイルランドに面したウィンズケール再処理工場がある。これは原爆用のプルトニウムを取り出すために1952年から運転が始まり、途中から商業的原子力発電所の使用済み核燃料も処理するようになった、という。つまり再処理工場とは使用済みの核燃料からプルトニウムを取り出すためのものなのである。
チェルノブイリ原子力発電所の自己で起きた原子力開発史上最悪の事故で撒き散らされた核分裂生成物(死の灰)はセシウム137を尺度にすると広島原爆の800倍にもなるという。このデータを紹介した後で「原子力発電所の一年分を一日で放出」という項目では、プルトニウムを取り出す過程で、再処理工場は原子力発電所が一年かけて放出する放射能を一日で出す、と指摘する。先ほど挙げられたウィンズケール再処理工場ではセシウム137に換算して広島原爆の400倍の放射能が海に放出されている、という。
「『十分な拡散・希釈』は汚染を広げる」という項目では六ヶ所再処理工場での問題点が指摘される。六ヶ所再処理工場で放出が予定されている放射能のうち、被曝に関係するのはクリプトン85、トリチウム、炭素14の3核種である。日本原燃はそれらの核種はフィルタでは取り除けないことを理由に「十分な拡散・希釈効果を有する高さ150mの主排気筒、沖合3km、水深44mの海洋放出口から」全量を放出する、としている、と指摘する。そして「それらの放射能もフィルタ以外の方法を使えば捕捉できますが、そうしない理由は、お金がかかるため」と指摘する。
一応日本原燃の言い分も。
まずクリプトン85、トリチウム、炭素14については自然界にも存在する、という(「広報紙・動画 | 広報活動 - 日本原燃株式会社」)。そしてその影響については非常に小さい、という(「広報紙・動画 | 広報活動 - 日本原燃株式会社」)。基本的な日本原燃のスタンスについてはこちら(「[環境モニタリング] よくあるご質問 | 事業情報 - 日本原燃株式会社」)。
放射能に関してはたからくじみたいなもので、少量の被曝でも影響が出るケースもあるし、多量の被曝でも影響がないケースもあるが、被曝量が多ければ多いほど影響が出る可能性は高くなる、という話を一般教養の講義で聞いたことがある。「ガン当たりくじ」理論というのだそうだが、今から20年近く前の記憶なので、いささかあいまいである。