はしごを外される歴史認識

沖縄タイムス』の記事(「http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291300_02.html」)から。

渡海紀三朗文部科学相は二十八日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題への対応で、沖縄タイムス社に「今回の検定に至る経緯や趣旨等については十分に精査していきたい」とコメントし、検定過程を詳しく調査する考えを明らかにした。
文科省はこれまで「教科用図書検定調査審議会が決めたことには口出しできない」などとして、検定を問題視しない考えを示していた。
渡海文科相が検定経緯の調査にまで踏み込んだコメントをしたことで、文科省側が検定結果を変更する可能性も出てきた。
本紙は渡海文科相の就任後、沖縄戦の専門家がおらず文科省主導で審議が進んだ検定の経緯などについて質問書を提出。文科相が二十八日に文書で回答した。
渡海文科相は「集団自決」についても書面で、「多くの人々が犠牲になったということについて、これからも学校教育においてしっかりと教えていかなければならない」とコメントした。

29日の沖縄における県民集会は、11万人を集めた、という。県民集会については様々な意見が出されるだろうが、私が注目したのは渡海文科相の発言。これの背景になっているのがおそらく渡海文科相が所属する山崎派山崎拓氏の次の発言。

沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」で軍強制の記述が削除された高校歴史教科書の検定問題について、自民党山崎拓前副総裁は二十八日、「軍の関与を認めているが、強制の有無が明確ではない」との認識を示し、「検定に過誤があった場合、文科相は(省令で)見直しを勧告できる。文科相と話し合う」とし、山崎派から入閣した渡海紀三朗文科相に、検定見直しの勧告を働き掛ける考えを明らかにした。
同日午後、宜野湾市内のホテルで開かれた安次富修衆院議員の激励会で述べた。
山崎氏は来県前、渡海文科相に「二十九日には県民大会が開かれ、県民の琴線に触れる重要な問題。打開に向けた重大な決意が必要」と述べたという。
渡海文科相は「よく勉強し、県民の考えをよく受け止めて対処したい」と答えるにとどまったという。
山崎氏は「沖縄選出・出身の国会議員と連携して真剣に取り組み、県民の期待に応えたい」とした。

いずれも29日の県民集会を前にして出されている。今までならばこういう動きは多分無視されたのだろう。しかし安倍政権から福田政権に代わり、こういう動きにも配慮する方針に変わったものと思われる。
これについては色々と思うことがあるが、一つだけ。こういう政局によって検定が左右されるのは望ましくない。保守色の強い政権になればそれに従い、保守色が薄まれば、またそれに伴って検定基準が変わる、というのであれば、検定は百害あって一利なし、である。そもそもいい教科書、悪い教科書の基準は非常にあいまいで、主観的である。様々な教科書が出て、それを現場の教師が現場の意見で選べるようにすべきだろう。学校ごとに、さらに言えば、教師ごとに教科書が違っていてもいいのではないだろうか。なんてことを考えてしまうのは、私がそもそも統一した教科書の存在しない大学と、客観的に劣悪な教材が跋扈している受験産業でしか教えていないからだろうか。