橋下徹弁護士への公開質問状(転載)

光市母子殺人事件の被告人を死刑にすべきかどうか、という議論とは別にいくつか疑問に思っていたことがあった。
その最たるものが橋下徹弁護士の懲戒請求問題である。本人も自覚している(やしきたかじん氏の番組でパネラーからつっこまれていた。)ようではあるが、なぜ橋下弁護士は自分で率先垂範して懲戒請求を出さないのか(出したようだ。追記、出していないようだ。個人的にはそこが一番問題だと思う。金美齢氏が「率先垂範して出すべきだ」と「たかじんのここまで言って委員会」で追究していて、橋下弁護士は「当然出します」と言っていたのを覚えていたので、あまり言及するのを控えていたのだが、これは酷い氏のコメントをきっかけに少し言及しておく。橋下弁護士が自分で懲戒請求を出すのは問題とは思わない。懲戒請求を出す権利は当然ある。当然橋下弁護士に対する懲戒請求を出すことにも問題はないと考える。橋下弁護士が煽っておいて自分は出さない、というのが私には一番腑に落ちない。)、とか、懲戒請求と抗議のメッセージを伝えることとの違いというもの、つまり懲戒請求の濫用は法に触れる可能性がある、ということは周知徹底されていたのか、とか、橋下弁護士は自分が煽ったわけではない、というが、懲戒請求を出した人々は橋下弁護士の発言がなくても懲戒請求を出したのだろうか、とか。
「元検弁護士のつぶやき」から転載(「�����۸��Τ��Ф������������� - �����۸��ΤΤĤ֤䤭」)。

私は、橋下弁護士に対して、以下の点について教えて欲しいと思っています。
(1)橋下弁護士は、テレビでの問題発言において、弁護団の主張内容が非常識であることが、懲戒事由になる旨発言し、懲戒請求を扇動したように見えるのだが、それで間違いないか。違うというのなら、そのような印象を多くの視聴者が受けたことについてどう思うか。
(2)その後の記者会見で、弁護団の主張内容が1,2審から変更したことについて、説明義務違反があり、世間の不信を招いたことが懲戒事由にあたる旨、説明していたが、何故に、テレビではそのように説明しなかったのか。何故に橋下弁護士の主張内容は変遷しているのか。
(3)橋下弁護士は、自身のブログ上、今枝弁護士に対して、「世間が求めていた情報は、疑念は、差し戻し審で主張の変更をあそこまでするのであれば、1審、2審は何をやっていたのか?ただ一点それに尽きます」と言っているが、テレビで問題発言をした際の主張、その後の記者会見で行った主張から、さらに変遷しているのではないか。そのように言い切れるのはどういう根拠か?世論調査でもやったのか。
(4)上記に引き続いて「被害者遺族も、そこに一番悔しさや虚しさを感じ」と断定しているが、根拠は何か? 本村さんに確認したのか?
(5)橋下弁護士は、自身のブログ上で、「原告らも世間に説明する必要性をやっと感じたようです」といっているが、従前から本を出版し、記者会見を開いていたことはどう考えるか。記者会見で説明しても、取り上げてもらえず、メディアにのらない可能性についてはどう考えるか。また、橋下弁護士がバッシングを煽った結果、脅迫などが相次ぎ、これを止めてもらうために、やむを得ずネット上で更なる説明をしなければならない立場に追いやられたとは考えないのか。
(6)説明義務は、裁判の公開の原則によって、法廷で行うことにより果たされるのが現在の憲法なのではないか。これ以上に説明義務を課すことによる事件関係者のプライバシー侵害はどう考えるか。
(7)説明義務を問題にするのであれば、何故に、橋下弁護士において、テレビで、刑事弁護人の職務、司法の独立などの理念を説明しなかったのか。橋下弁護士自身に説明義務違反はないのか。
(8)また、懲戒請求は、濫用すると虚偽告訴罪業務妨害罪、損害賠償請求の対象になるものであるが、何故に、これを説明しなかったのか。橋下弁護士自身に説明義務違反はないのか。
(9)懲戒請求が大変な手続であることを知らずに請求してしまった視聴者が多数いると思われるが、これらの人に対して謝罪はしないのか。謝罪することが「一般人の常識」「マナー」なのではないか。
(10)自身が懲戒請求しない理由について、従業員を養っていかねばならない、手間暇が大変である、と言っているが、4000件の懲戒請求をした素人の人たちの方が手間暇が大変ではないか。これらの人たちも汗水を流して働いているのではないか。
(11)弁護団の主張内容が非常識であるとして、世論を扇動したのは橋下弁護士ではないか。刑事司法に対する社会の信用を失わせた点について自身の責任はないのか。
(12)橋下弁護士自身は、弁護団の主張内容について、どの程度の調査をしたのか。弁護団は2006年10月に、光市事件についての本を出版しているが、これを読んだ上でのテレビでの発言なのか。テレビで発言する前に、同じ弁護士であるのだから、せめて電話でも、弁護団に事件内容を確認するべきであったのではないか。調査義務を尽くさなかったと言われてもやむを得ないのではないか。仮に調査していたとするのなら、なぜその内容をテレビで説明しなかったのか。
(13)テレビでは、何万、何十万と懲戒請求が行われれば、弁護士会は処分を出さざるを得ない、と発言しているが、数の問題ではないのではないか。橋下弁護士自身、懲戒請求を起こされたことがあると発言しており、それが大変に手間暇がかかることも自認する発言を行っているが、何万、何十万もの懲戒請求がなされれば、業務の妨害になることはわかっていたのではないか。弁護団に懲戒事由があるか否かにかかわらず、無用に多数の懲戒請求が殺到すれば、それだけで業務妨害になるのではないか。弁護団の活動の妨害になることにより、刑事裁判で真実追究が不十分になることの責任は感じていないのか。
(14)懲戒請求に世論を反映させたいというのであれば、橋下弁護士懲戒請求を行い、一般市民から署名や手紙などを集めて証拠として提出すればいいのではないか。大量の懲戒請求を行う必要性はないのではないか。
(15)橋下弁護士は、テレビで、世論というものは正しい、と発言しているが、果たしてそうなのか。世論はヒットラーのような一人の人の扇動によって簡単に変わるものではないか。世論は移ろいやすいものであるが、世論が変われば、橋下弁護士の考えも変わるのか。それは信念のない態度とは言えないか。ナチスドイツでユダヤ人を虐殺した当時の世論というのは正しかったのか。司法の役割には、このような人権弾圧に対して、世論に屈せずに人権を守ることにあるのではないか。人権を守る局面において、世論を配慮するということは、世論による人権侵害を認めることになるのではないか。人権というのが自然権であることと矛盾しないのか。
(16)今回の騒動で、本村さんは不快感を示されたそうであるが、これをどう思うか。ブログ上でも公式に謝罪するべきではないか。これが「一般人の常識」「マナー」ではないか。
(17)ブログ上で、懲戒請求者に対し、懲戒理由を答弁書の内容に合わせて修正するよう示唆しているが、裁判用の卑劣な工作と言われてもやむを得ないのではないか。
(18)橋下弁護士の言う「世間の風」「空気」というのは一体何なのか。どうやって実証するのか。それが自らわかっているように発言しているが、傲慢ではないのか。世論調査でもしているのか。
(19)橋下弁護士は、8月6日に開かれた弁護団の緊急報告集会に出席しているが、そこで「A」弁護士は、以下のように発言している。
「49期のAなんですが、弁護団に対する懲戒請求のきっかけは僕がつくったものだと思っています。これについて、僕は、弁護士の懲戒請求、特に品位を害する行為というのは廃止すべきだということを常々言っていまして、去年、おととしも、もう名前は忘れましたけれども、おととしぐらいの大阪の弁護士会の会長ともさんざんもめまして、一々僕がメディアで言っている発言について市民からクレームが来たことについて、毎回毎回呼び出しに応じて弁明書を出さされて応答しなければいけないなんてことをやっていたら何もできないと。そのときに、弁護士会のほうが、弁護士たる者、一般市民からあらゆる行動について干渉を受けるんだというような報告で、結局、僕は弁護士会の呼び出しに応じずに、文書による注意文という形で文書が送られてきまして、それをもとにして、そうであるならばと、これは弁護団の方々には申し訳ないんですけれども、あらゆる行動について、一般市民の監視下に置かれるのであればということで、テレビで発言したということが一つのきっかけでありまして、そこでいろんなご迷惑、特に家族の方に危害が及んでいるということでありましたら、この辺は申し訳なくは思っていますが、そういう経緯がありました。」
これは橋下弁護士の発言ということでいいか。以下、橋下弁護士の発言であるという前提で質問を続行する。
(20)橋下弁護士は、懲戒請求手続を廃止するよう従来主張していたことになるが、弁護士会自治による独善を主張している現在の態度と矛盾しないのか。
(21)弁護士会による注意処分を受けたことで、何故に、「そうであるならばと」、弁護団に対する懲戒請求を呼びかけることになるのか。弁護士会に対する反感を、弁護団に転嫁したと言われても仕方がないのではないか。
(22)橋下弁護士は、懲戒請求のきっかけを作ったことを自認しているのではないか。答弁書で、呼びかけと懲戒請求がなされたことの因果関係を否定しているようであるが、矛盾するのではないか。因果関係を否定することは、視聴者に対する裏切りになるのではないか。
(23)橋下弁護士は、自己の責任を認めず、ブログで、上からの目線で今枝弁護士その他弁護団を批判しているが、橋下弁護士がブログでよく言っている自分が「絶対的な正義と勘違いしている」ということになるのではないか。独善的と言われてもやむを得ないのではないか。カルト弁護士という言葉は橋下弁護士にあたるのではないか。「弁護士には謙虚さが必要」とよく言っているが、橋下弁護士はこれで謙虚と言えるのか。
(24)民事訴訟で、なぜ出廷しないのか。「弁護士同士の痴話喧嘩に過ぎない」などとブログで書いているが、4000件の懲戒請求をしてしまった人たちに失礼ではないか。本村さんにも失礼ではないか。「書面の交換に過ぎないから公開法廷でも傍聴者にわからない」というが、裁判所の心証が開示されることもあり、公開されない電話会議では、一般市民に対する「説明義務」が果たされないのではないか。
(25)FAXを90枚、事前に電話することなく、いきなり送るのは、「一般の常識」からして「マナー」違反ではないか。ブログでは、原告らがマナーに欠けるからなどと言っているが、原告らが橋下弁護士に対してマナーに欠けたことをしたことがあったのか。また、FAXを送ったのは原告らではなく原告らの代理人弁護士ではないのか。
(26)電話会議は、携帯電話による会議も可能であり、法廷に出廷しないで電話で会議をする橋下弁護士の方がフレキシブルに期日を合わせるのが「一般の常識」であり、「マナー」なのではないか。
(27)今枝弁護士が、ブログ上で事件の詳細について説明したことについて、橋下弁護士は、本村さんが、複雑な心境を示したことに反応して、自己のブログ上で「絶対にやってはいけない」と今枝弁護士を批判しているが、主張変更の理由についての説明責任があると言っていたのは橋下弁護士ではないか。事件の詳細について説明しなければ、主張変更の理由をきちんと説明できないのではないか。今枝弁護士を追い詰めたのは橋下弁護士ではないか。
(28)答弁書において、大阪弁護士会会長や、最高裁判事のことを名指しで酷評しているが、このような答弁書をインターネットで公開することは名誉毀損にあたるのではないか。「一般の常識」からして「マナー」違反ではないか。
(29)今枝弁護士が、記者会見の際に涙を流したこと等について、「民意の力は重要」「これまで横暴極まりなかった弁護人らに対して・・・謙虚になる態度を芽生えさせたのです」「原告らを改心させました」等、見下した勝利宣言をしているが、橋下弁護士が煽った大量の懲戒請求等によるバッシングで辛い思いをしているからとは考えないのか。何故にわかったような発言をするのか。他の弁護士を「○○カス弁護士」「カルト集団」「世間の風を知らないお坊ちゃん」などということも含めて、橋下弁護士の言う「俺様は偉いんだ」という態度ではないのか。
(30)8月6日の弁護団の緊急報告集会で、橋下弁護士は、「安田弁護士が最高裁の弁論を欠席したこと、これは究極の弁護方針として、弁護戦術として、これはもうもっともだと思うんですが」と発言しているのではないか?
最高裁の弁論欠席については何ら問題がないという認識でいいか?
(31)同じく、8月6日の弁護団の緊急報告集会で、橋下弁護士は、「弁護方針については十分理解できたつもりですが」「新しい証拠に基づいて主張が変わるんだったら、これはもうやむを得ないと」と発言しているのではないか。
弁護団の弁護方針、主張の変更については何ら問題がないという認識でいいか?
(32)橋下弁護士は、ブログで「主張の変更の理由、すなわち1審・2審の弁護士は何をやっていたのかきっちりと説明しろと言ってるんだ。その上で、刑事裁判制度を守るために、主張の変更を行うが、この点理解して下さいと、被害者遺族に謝罪し、説明しろってことなんだ。」と言っているが、これまで自身の事件で、主張を変更した場合には、被害者に謝罪し、説明してきたのか? また、民事事件でも、同様のことをやってきたのか?
(33)橋下弁護士の刑事弁護の経験如何。殺人事件の刑事弁護はやったことがあるか。あるとして、死刑が争われた事件をやったことがあるか。
(34)殺人事件の被害者弁護をやったことがあるか。
以上について、私のみならず、他の一般の方々も疑問に思うのではないかと思います。私は、橋下弁護士には、以上の点について速やかに一般社会に対して説明すべき「説明責任」があると思います。」

とりあえず備忘録代わりに。長くて読むのも大変だが。