戦国時代とは何だったのか

ここまで細かい話を続けてきた。細かい考察を基にして「戦国時代とは何だったのか」という問いに答えを出すと、室町殿の分裂によって室町殿が求心力を失って、分裂した室町殿権威によって有力者が振り回される時代である、と言えるだろう。その意味では戦国時代は室町時代の中の時代区分であり、室町幕府が完全に無くなればそれは戦国時代でもない、と私は考える。従って1590年に戦国時代が終結したとは思わない。これは戦国時代以前から分裂していた東国と西国を統合した、というべきだろう。
1588年に足利義昭征夷大将軍を辞任し、豊臣秀吉の庇護下に入った段階で室町幕府は完全に消滅し、室町時代は終わる。室町時代とは室町殿によって統合されてきた室町日本が存在した時代である。とすれば1588年以前に室町殿が統合された段階で戦国時代は終結した、と考えられよう。戦国時代とは室町殿が義稙と義澄に分裂したことに端を発した。従って義稙の系譜を引く義栄が義澄の系譜を引く義昭に屈した時でなければならない。それはやはり織田信長が義昭を奉じて入京した時に求められるだろう。私は戦国時代は1493年の明応の政変を以て全国的に始まり、畿内においては1568年の信長入京を以て終結すると考えたい。東国では明応の政変を受けて堀越公方が崩壊し、古河公方を擁立した後北条氏が一応権力を握るが、反北条・反古河公方上杉憲政が越後に亡命したことを以て本格化する。上杉憲政から関東管領と上杉氏の家督を継承した長尾景虎改め上杉政虎古河公方後北条氏体制と対峙する一方、後北条氏は甲斐の武田晴信駿河遠江今川義元と組む。これが東国における戦国時代の主要な図式である。これを揺るがす要因は古河公方の分裂であり、足利義氏と足利藤氏の対立は、上杉対後北条・武田・今川の対立を激化させた。これが終結するのは足利藤氏が後北条氏に捉えられたことを受けて越相同盟が1569年に結ばれたことで東国の戦国時代は終結する。偶然か必然か、東国でも西国でも非常に近い時代に終結しているのである。