追加法182条

式目42条の「去留」関係の細則と言われる追加法182条(『中世法制史料集』追加法)。仁治3(1242)年1月15日に出された「新御成敗状」の一部。
とりあえず本文。

一 百姓逃散時事
右、或抑留資財、或召取其身之条、頗無謂乎。自本至于去留者、可任土民之意、但有年貢所当之未済者、可令致其沙汰矣

読み下し。

一 百姓の逃散の時の事
右、或いは資財を抑留し、或いは其身を召し取るの条、すこぶる謂れなきか。もとより去留に至りては、土民の意に任すべし。但し年貢所当の未済あらば、其の沙汰を致さしむべけんや。

この法令を分割すると次のようになる。

一 百姓の逃散の時の事
A 右、1 或いは資財を抑留し、2 或いは其身を召し取るの条、3 すこぶる謂れなきか。
B もとより去留に至りては、土民の意に任すべし。
C 但し年貢所当の未済あらば、其の沙汰を致さしむべし。

百姓の逃散について定められた法令で、1「資財を抑留」と2「その身を召しとる」ことが3「謂われなき」とされている。「その身を召しとる」というのは、「百姓」を隷属民である「下人」とすることで、下人となった「百姓」は地頭の財産となる。「百姓」が下人となってしまうのは、その「百姓」にとっても問題であるが、同時に荘園領主にとっても問題なのである。何しろ下人となった「百姓」は地頭の私的財産となってしまうのであるから。従って「百姓」を下人化する「地頭非法」を阻止するのは、荘園領主との協調上からも要請されるのである。
試みにこの時に出された「新御成敗状」の条文の「事書」(項目名)を全て挙げておこう。
「神社仏寺事」
「六斉日殺生事」
「鷹狩事」
「殺害、山賊、海賊、夜討、強盗、窃盗、刃傷、放火、殴人等事」
「年貢所当事」
「官爵事」
「人倫売買事」
「悪口、謀書、懐抱他人妻、扶持罪人、逃失召人事」
「出挙利分事」
「奴婢雑人事」
「百姓逃散事」
「給田畠売買事」
「所領得替前司新司事」
「中媒事」
「辻捕事」
「放牛馬、採用土民作物草木事」
「犯罪事」
「乱牛馬事」
「給府中地輩事」
道祖神社事」
「町押買事」
「府中指笠事」
「大路事」
「保々産屋事」
「府中墓所事」
「令押作私物於道々細工等事」
「出禄事」
「双六、四一半、目増、字取等博奕事」